映画

2018年7月に観た映画まとめ

タクシー運転手 約束は海を越えて('17 韓国 /監督:チャン・フン) 光州事件での実話を元にした人間ドラマ。軍事政権の横暴描写は現実味がありすぎるほどに迫力があり、特に病院での一つの山場のシーンは痛切すぎてつらいほど。ドイツ人記者の外国人としての…

2018年8月に観た映画まとめ

ブリグズビー・ベア('17 アメリカ/監督:デイブ・マッカリー) 宇宙を冒険する英雄グマのブリグズビー。そのドラマシリーズを創っていたのは自分を誘拐して育てていたニセの父だった。ジェームズはその真実を知った後もブリグズビーへの愛着を失わず、ついに…

2018年6月に観た映画まとめ

イカリエXB-1 デジタル・リマスター版('63 チェコスロバキア/監督:インドゥジヒ・ポラーク) 宇宙船の居住区画、特にプールがある情景は当時としては斬新だったろうなと面白く思ったが、SF特撮映画史という枠組みへの興味や(反映されたであろう)当時の世界…

2018年5月に観た映画まとめ

ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書('17 アメリカ/監督:スティーヴン・スピルバーグ) スピルバーグの映画、良く言えばシンプル、悪く見れば粗いなーというのが観終わった後の感想。ただ、軍事機密の漏洩が描写にあってただの一人も人死にを出さない節度…

2018年4月に観た映画まとめ

ぼくの名前はズッキーニ('16 スイス/監督:クロード・バラス) 子ども向けのストップモーションアニメという体裁だが、冒頭から不慮の事故として非常に大きな悲劇が淡々と日常の一面であるかのように描かれている点や、保護施設の旅行として出かけたスキー場…

2018年3月に観た映画まとめ

花筐/HANAGATAMI('17/監督:大林宣彦) 三時間を超える上映時間はやや長かったが、監督の手法とテーマの集大成を感じるには妥当ではあった。 青春とはすなわち無為なり。君、かけがえのない無為を戦争などに捧げることなかれ。主人公の喉を借りて老境の監督…

2018年2月に観た映画まとめ

光('17/監督:大森立嗣) 暴力が起こった時それは「トラブル」だが、暴力に暴力で返した時「システム」となる。その推移をまざまざと見せられた形ではあるのだが、この映画のテーマはそういう倫理面にはない。愛情と執着、錯誤と真実、平和と混沌。あらゆるも…

2018年1月に観た映画まとめ

(印象が強かった順) 「女神の見えざる手」('16 フランス・アメリカ/監督:ジョン・マッデン) ロビイストとはつまり広告代理店社員の言い換えでいいのだろうか? 閑話休題。とにかくジェシカ・チャスティン演じるプラグマティズムに満ちた主人公のキャラクタ…

2017年に劇場で観た映画ベストテン

映画館に足を運んで観たのは総計23本。リストは日付の新しい順ですが、多少前後しているかも。猫が教えてくれたこと(’16 トルコ/監督:チェイダ・トルン) ソウル・ステーション/パンデミック(’16 韓国/監督:ヨン・サンホ) セブン・シスターズ(’16 イギリ…

猫が教えてくれたこと('16 トルコ/監督:チェイダ・トルン)

ふっくらとフェトジェニックな街の有名猫、愛くるしいとしかいいようのない子猫のオンパレード。東西の文化が交わるといわれるトルコはイスタンブールで、神と人との世界を往来する自由な存在・猫へのまなざしから見えてくる世界のまぶしさとはかなさ。船に…

ソウル・ステーション/パンデミック('16 韓国/監督:ヨン・サンホ)

ゾンビ・トレインパニック映画「新感染」の前日譚として製作されたアニメ映画。バンド・デシネのような透明感のある塗りが美しい。韓国映画はあまりたくさん観てきたとはいえない自分だが、この映画が現時点でベスト韓国映画。徴兵制、儒教社会、女性差別、…

ブレードランナー2049 ('17 アメリカ/監督: ドゥニ・ヴィルヌーヴ)

前情報を持たずに観に行ったら、無印「ブレードランナー」から直線的に繋がったプロットだったので虚を突かれた。自分としては、この監督の演出傾向だったら別のキャラクター構成で前作とは違う語り口で観たかったなと思うのだが。メーカー会社内での震える…

セブン・シスターズ('16 イギリス、アメリカ、フランス、ベルギー/監督:トミー・ウィルコラ)

多胎妊娠が深刻な社会問題となった近未来、厳密な"一人っ子政策"のさなかに生まれた七人姉妹。祖父によりそれぞれ曜日の名前を付けられた彼女らは、周囲の目をかいくぐりつつ七人で一人の人格を演じながら長じて、やり手のバンカーとして生計を立てていた。…

ハートストーン('16 アイスランド・デンマーク/監督:グズムンドゥル・アルナル・グズムンドソン)

アイスランドのさびれた漁村でぶらぶらと思春期をおくる二人の少年が主役。その片方の繊細な少年(金髪で長身、母親に溺愛される端正な面立ちだが友人には醜いと揶揄されるあたり、田舎のコミュニティらしい閉鎖性が描写されている)は親友に恋愛感情を抱いて…

映画オールタイムベストテン:2017

http://d.hatena.ne.jp/washburn1975/20171031 id:washburn1975 さんの企画に参加させていただきます。順不同。 「道」('54/イタリア/フェデリコ・フェリーニ) 「ポセイドン・アドベンチャー」('72/アメリカ/ロナルド・ニーム) 「グロリア」('80/アメリカ/ジ…

残像('16 ポーランド/監督:アンジェイ・ワイダ)

戦後ポーランドに吹き荒れるスターリニズムの嵐。個人として、芸術家として痩せ我慢の自由を貫こうとする主人公が、暮らし生きるために必要な権利を少しずつ奪われていく様子が、あからさまな悪役が出ないがためにかえって戦慄を呼ぶ。じわじわと広がってい…

パターソン('16 アメリカ/監督:ジム・ジャームッシュ)

あなたが乗ったバスの運転手は、余暇や始業前に詩を手帳に綴る趣味を持っているかもしれない。今暮らしている相手とは、もしかしたら出会えた事そのものが奇跡かもしれない。今日というタイミングで、あるいは仕事にめったにない物理的なトラブルが起きるか…

ディストピア パンドラの少女('16 イギリス/監督:コーム・マッカーシー)

原作の描写4割ぐらいをカットしてコンパクトに映像化した…という印象。ただし低予算がうかがえた予告編を視た時よりかは悪くないと感じたのは、廃墟となったロンドンや郊外の街の静寂の美しさのためか。人種設定を大胆に変えた配役も、それぞれの好演(女医…

変態アニメーションナイト2017(オムニバス)

2014年以来二度目の企画。前回よりもスケールもパワーもダウンした印象で、小粒な作品が多い。そんな中、擬人化された犬のような清掃員が、大きなモンスターのような闖入者に迷惑を掛けられて『バカぁー!』(吹き替えの絶妙さによって可愛い)と叫ぶ『バカ!…

怪物はささやく('16 アメリカ・スペイン/監督:フアン・アントニオ・バヨナ)

重い病が好転しない母と暮らす少年。彼の元に幻影の怪物が夜毎訪れて三つの不可解な物語を聞かせる。そして怪物は少年に、自らの物語を話せと迫るが… 怪物の描写がややハリウッド的で、もっと情緒的かつクラシカルに見せてほしかったなと思う。 児童文学を原…

ヴィジット('15 アメリカ/監督:M.ナイト・シャマラン)

CATVにて鑑賞。会ったことのない祖父母のもとで一週間過ごすために初めての僻地へ赴く15才と13才の姉弟。シングルマザーの母を気遣いつつも明るい二人に、祖父母は序々に異様な顔を見せ始める。 …いま現在、ゆるやかに脳機能が衰えつつある両親と暮らしてい…

未来を花束にして('15 イギリス/監督:サラ・ガヴロン)

女性参政権を求める運動に加担していくことになるヒロインだが、彼女の容貌は丸顔で一児の母ながらいまだあどけない。現代の目からみてもとりたててマチスモに見えない夫(なにせ配役がベン・ウイショー)への演出とともに、ステレオタイプにならないための細…

フランコフォニア ルーヴルの記憶('15 フランス・ドイツ・オランダ/監督:アレクサンドル・ソクーロフ)

美術作品とかつての国家間の略奪行為との関連は避けにくく、そういった間隙を詩情をもって表現した作品。当時の空気感を再現したナチス占領時代のパートが(ブロマンス的にも)美しい。難破しそうになりながら美の精粋を運ぼうとする寓話めいたエピソード部分…

Sharing('14 監督:篠崎誠)

東日本大震災で夫を失った大学講師、卒業研究として舞台で震災被害者を演じる女子大生、孤独を募らせる男子大学生。三者の精神がそれぞれの沸点を迎える時、自身と他者、現実と虚構それぞれが共鳴する中で裂け目が現れる。 出てくる役者は整いすぎた顔立ちで…

サラエヴォの銃声('16 フランス、ボスニア・ヘルツェゴビナ/監督:ダニス・タノヴィッチ)

表面上はリッチでにぎやかなサラエヴォ中心部のホテル。しかしその内側では、給料未払いに業を煮やした現場従業員たちによりストライキが計画されていた。一方、屋上ではテレビ局によるサラエヴォ事件100周年を記念したインタビュー番組が撮影されていた。ホ…

牯嶺街少年殺人事件('91 台湾/監督:エドワード・ヤン)

4Kレストア・デジタルリマスターされての再上映。フィルム撮影の映画の特長に満ちており、暴力シーンが多いものの典雅なまでに優美。大戦後の台湾移住者たちというままならない人間の世を描きつつも、光と風と夢だけで構成されているような作品だった。少女…

SPRIT('17 アメリカ/監督:M.ナイト・シャマラン)

三人の女子高生が多重人格の男に拉致監禁されるという主軸に関しては退屈ではないものの特には新鮮味はなく、シャマランのとある既作とのリンクが明かされるラストに関しても、長い期間またいでもどうしてもやりたかったわけね!という感慨以上のものは無く。…

お嬢さん('16 韓国/監督:パク・チャヌク)

原作はイギリスのミステリ小説『荊の城』だが、舞台も時代も刷新されているので、"原案"程度に捉えた方がいいと思う。日本統治下という設定から予想される政治要素はほとんど皆無で、テーマの一つである女性解放も社会に向けて開かれるというまでのスケール…

夜は短し歩けよ乙女('17/監督:湯浅政明)

酒豪の女子大学生と彼女に惚れてそれとなくつきまとう先輩学生のすれ違いの冒険を、四季を一晩でめぐるという趣向で描く。めくるめく映像体験という意味では満足できたし腰をおもいきり低くしてアヒルのように口をつきだし練り歩く『詭弁踊り』や春画コレク…

五日物語 3つの王国と3人の女('15 イタリア、フランス/監督:マッテオ・ガローネ)

おとぎ話の可憐さと酷薄さがギトギトにならない手前加減で詰まっていてとても好みな作品。海の怪物のあえての着ぐるみ感もけっしてちゃちではなく、かりそめの美女がふたたび皺に覆われた肌にもどっていくCG処理もエフェクトをやりすぎていない。 あらゆる人…