牯嶺街少年殺人事件('91 台湾/監督:エドワード・ヤン)

4Kレストア・デジタルリマスターされての再上映。フィルム撮影の映画の特長に満ちており、暴力シーンが多いものの典雅なまでに優美。大戦後の台湾移住者たちというままならない人間の世を描きつつも、光と風と夢だけで構成されているような作品だった。少女をめぐって凄みあう少年たちを横から照らす朝日、取り返しのつかない衝動の瞬間をただ包み込むあたたかい夜市の空気。世界とそれを感知する15歳の心はただただ真っ直ぐ。そして社会の複雑さは、美しさをそのままにしておくことはない。美しさとはシンプルさの別名であるから。だから映画はここにあるのだと思う。風と光と心の証しのために。