ハートストーン('16 アイスランド・デンマーク/監督:グズムンドゥル・アルナル・グズムンドソン)

アイスランドのさびれた漁村でぶらぶらと思春期をおくる二人の少年が主役。その片方の繊細な少年(金髪で長身、母親に溺愛される端正な面立ちだが友人には醜いと揶揄されるあたり、田舎のコミュニティらしい閉鎖性が描写されている)は親友に恋愛感情を抱いているが、相手は気付いていない。しかし彼の押し隠した気持ちは序々に肌理の荒い集団心理の中で晒されていき、暴力的な父親からの抑圧にも耐えかねた末に事件は起こる。
寒々しさの中にシンプルな叙情性のある風景の撮り方も見事だが、なにより離合がモザイクのように組みあわさった10代の人間関係への理解の深さが印象に残る。そして一さじの希望を残したラストシーン。若さはあらゆる傷に無防備だけど、そこから回復する可能性にもまた満ちている。