2024年2月に読んだ本

潜水鐘に乗って

試作という印象の短編が続いた後、ピントがぶれずにグリップを保った仕上がりのいくつかが後半に。『願いがかなう木』は娘にさえ老いを見せたくない母へ距離を縮めようとする繊細な心の動きが、コーンウォールの風と波の感じられる文章で語られる。『ミセス・ティボリ』は娯楽寄りの読み口となってミステリアスな老女を施設職員の目で追い、奇想の中に切実な心情が漂って味わいが強い。