父の命日で菩提寺へ。ここ数日の朝晩の冷え込みで自律神経の調子を崩しており車中は難渋したものの、到着したあとはスッと気分が良くなったのが不思議。それで、亡くなった当日の父の心持ちをあらためて想像しながら、ご住職の読経で手を合わせた。

 

「闇の中の男」

闇の中の男

闇の中の男

 

 大病が見つかった娘、心労に苦しむ孫娘とともに暮らす老いた男が、眠れない床でじっと闇に眼を凝らす。彼の脳裏には、創造主である自分自身を次元を超えて殺す宿命を負ったひとりの若い男の姿が動きはじめていた…という入れ子構造の小説だが、終盤に入る前にそれはあっさりと方がつく。やや拍子抜けだったが、そこから物語は主人公の一族に起こった不幸な出来事の細部へとクローズアップしていき、そしてほとんど直接的なまでに衝撃的な視覚イメージへとあらゆる支流が結像していく。

9.11後のアメリカ人の渾沌きわまる苦悩とその克服への意思をここまで追体験させられた記憶はない。オースターの筆力は圧倒的だ。

鬼滅の刃」第12巻から15巻を再読。以前に読んだ時は時間に追われていたとはいえ、二回目でもまったく面白さの実感に変わりがないどころか、むしろコマ内の情報度をより深く味わえることに気付く。作者はやはりとんでもなく文化強度の高い環境で育っていると感じる。錦絵のけれん味、説話の無常観、民話の切迫さ。これらの混淆ぶりが、説明は難しいが現代的というか先鋭的に融合されて昇華されている。ほんとに今のジャンプはとんでもない才能を抱えていて、その作家たちはマガジン系の諌山創と肩を並べるレベルなのだ。

そしてもうひとりのジャンプの俊英にして異才の藤本タツキの本誌初連載作「チェンソーマン」。露悪的というにはあまりにも現実の空気を自然に採り入れた作風は前作「ファイアパンチ」以上になっていて、最新第4巻を読んだあとも戸惑うばかり。それは善悪倫理に対して個人としての思い入れが読み取れず、それでいてなぜか(…というかそれゆえにというか)不快感がないから。ファンタジー色が強かった当初から展開して、国家における暴力装置への視点が入っており飽きないが、それ以上に個性が強すぎるはずのキャラクターたちの感情の動きに親近感を持ってしまう。しかし本当に、まったく作者像がつかめない漫画だ。不思議。

第54回2019秋調査

アニメ調査室(仮)さんにて開催中。以下、回答記事です。

 

2019秋調査(2019/7-9月期、終了アニメ、48+7作品) 第54回

01,MIX,x
02,ギヴン,z
03,フリージ,x
04,鬼滅の刃,S
05,愛玩怪獣,x

06,手品先輩,x
07,闇芝居 七期,x
08,グランベルム,x
09,コップクラフト,F
10,まちカドまぞく,x

11,スタミュ 第3期,x
12,彼方のアストラ,F
13,ソウナンですか?,x
14,魔王様、リトライ!,x
15,フルーツバスケット,x

16,ダンベル何キロ持てる?,x
17,キャロル&チューズデイ,F
18,かつて神だった獣たちへ,F
19,ナカノヒトゲノム【実況中】,x
20,おしりたんてい 第3シリーズ,x

21,トロールズ:シング・ダンス・ハグ!,x
22,われしょ! 我ら! 小動物愛護委員会,x
23,キラキラハッピー ひらけ! ここたま,x
24,テレビ野郎ナナーナ わくわく洞窟ランド,x
25,機動戦士ガンダム THE ORIGIN 前夜 赤い彗星,x

26,ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかII,x
27,ロード・エルメロイII世の事件簿 魔眼蒐集列車 Grace note,x
28,うちの娘の為ならば、俺はもしかしたら魔王も倒せるかもしれない。,x
29,通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?,x
30,可愛ければ変態でも好きになってくれますか?,x

31,カードファイト!!ヴァンガード 続・高校生編,x
32,アイカツフレンズ! かがやきのジュエル,x
33,この世の果てで恋を唄う少女YU-NO,x
34,イナズマイレブン オリオンの刻印,F
35,FAIRY TAIL ファイナルシリーズ,x

36,Re:ステージ! ドリームデイズ♪,x
37,博多明太! ぴりからこちゃん,x
38,ありふれた職業で世界最強,x
39,荒ぶる季節の乙女どもよ。,x
40,からかい上手の高木さん2,x

41,戦姫絶唱シンフォギアXV,x
42,女子高生の無駄づかい,x
43,とある科学の一方通行,x
44,異世界チート魔術師,x
45,遊戯王ヴレインズ,F

46,胡蝶綺 若き信長,x
47,(全22話) 凹凸世界,x
48,(全39話) ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風,S
49,(1期) ムヒョとロージーの魔法律相談事務所,F
50,(特番 8話) 指先から本気の熱情 幼なじみは消防士,x

51,(特番 4話) グリザイア:ファントムトリガー THE ANIMATION,x
52,(ネット配信) ファイトリーグ ギア・ガジェット・ジェネレーターズ,x
53,(ネット配信) みるタイツ,x
54,(7月終了) わしも (7期),x
55,パウ・パトロール,x

 

{総感}

いつになく、視聴中途になってしまうことが多いシーズンでした。

{寸評}

鬼滅の刃」S:ほぼ毎回、二周は視聴していた。まず映像作品単体としてクオリティの安定度と完成度がずば抜けており、さらに脚色に原作へのこのうえなく深い敬意が感じられ、また関連各所にて大ヒット。結果として原作漫画のポテンシャルを引き出す事に成功しており、ジャンプアニメ最高の作品の一つとなった。今後の制作継続にも期待したい。

「(全39話) ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風」S:制作都合と思われる総集編が何度かあったためか、最終2話のみ日にちを置いての放送という形になったが、エピローグを印象付ける意味ではむしろ良かったかもしれない。本編の前日譚でほとんどが構成される最終話『眠れる奴隷』は、第六部以降の思索的な雰囲気を先取りしており印象深い。

目も開いてない子猫が、ただウニョウニョと生きている様を眺めているのは、穏やかな川の流れを見ているようなひととき。

夜は完全に近い無風状態で、日中よりむしろ暖かかった。兄が深夜営業のスーパーに行くというので、母と私も後部座席に同乗して、途上にあるマクドナルドのドライブスルーでソフトクリームを買って車中で食べた。おいしいねと言い合うトウの立ちすぎた娘と老母。よかった、このコスパの良いスイーツを一度味わってほしかったんだ。

この二日間、ブログ更新も忘れて新しく生まれた子猫4匹に見とれていた。

四月一日に迷い込んだ美しく若い猫が、ちょうど半年後の十月一日に珠のように愛らしく丈夫なこどもを産んだ。我が家にとって数十年ぶりの"純生"であり、そして最後の仔たちになるはずだ。

 

「ディリリとパリの時間旅行」('18 フランス・ベルギー/監督:ミッシェル・オスロ)

ベル・エポックのパリにニューカレドニアから博覧会で働くためにやってきた混血の少女ディリリ。素直さと聡明ぶりからいろんな出会いに恵まれる彼女は、街を不安に陥れる誘拐事件の謎を青年オレルとともに追う。

写真の手触りを残す背景に、完全に角が取れていないキャラCGがかぶさることで、一世紀前と現代との問題点が重なる手法が見てとれる。社会格差を時にのぞかせつつも、パリの朝、昼、夜はきらびやかでにぎやか、何かが生まれ落ちる予感に満ちていることが鮮やかな色彩設計で盛り立てられる。早いテンポで進行するストーリーも観ていて飽きなかった。ディリリが結局は両親と会えないままという現実的な寂しさを残したラストも自分の趣味に合った。色んな美がアニメならではの見所によって表現されている。

 

「ウィリアムが来た時」

ウィリアムが来た時

ウィリアムが来た時

 

切れ味のいい短編が日本でも人気を保ち続けているサキが、ドイツに戦争に負けたあとの大英帝国というif設定で書いた長編。なお、訳者解説で知ったがサキは長編をこれから著していこうというところで戦場に出征し亡くなったそうだ。

敗戦後の再編成される世情で自らを有利な立場に押し上げようとする者、征服されつつある故国から逃れて穏やかな新天地を植民地に求める者、趣味の世界で気を紛らわせようとする者。それぞれの立場を並列的に描いた章を綴る淡々としたリズムが、やがて一本筋の通った意思を暗示する象徴式典の最終章へと繋がっていく。早書きの印象はあれど、サキ小説の本質がよく出ている作品でもあるように思った。 

 

フィリップ・K・ディックの世界」 

フィリップ・K・ディックの世界

フィリップ・K・ディックの世界

 

 ディックの友人であり逝去後の作品管理人でもあったポール・ウィリアムズが聞き手となってのインタビュー集。とりとめのない話しぶりが行間に残されたスタイルにより、ディックの60年代カルチャーを戸惑いと不安と期待の中で生きた個人としての姿が鮮やかに浮かび上がる。自分にとってまだまだ未読の作品があるなかで、本書を読めて良かったなと思う。ディック。それは悩める誠実な現代人の一例であり、知らず知らずに巻き込まれそして台風の目でもある自身すらコントロールをいつしか失うひとつの磁場。

朝も近い今、窓を開けて半そでのパジャマでいるがまったく寒くない。かつて10月頭にはセーターを着て、黄色くなったイチョウを横目にしていたなと思い出すなど。

キンモクセイはよく香っており、ときおり日差しがきつく感じられる時もあれど晴れ具合は気持ちがいいここ数日。