2018年2月に観た映画まとめ

光('17/監督:大森立嗣)
暴力が起こった時それは「トラブル」だが、暴力に暴力で返した時「システム」となる。その推移をまざまざと見せられた形ではあるのだが、この映画のテーマはそういう倫理面にはない。愛情と執着、錯誤と真実、平和と混沌。あらゆるものは光の中でまばゆくせめぎ合い、そして世界はその薄皮一枚で常に進みつづける。美しく汚く、穏やかで激しい。映画という形式に息苦しいまでに純粋な大森監督の映画は、だから怖い。
スリー・ビルボード('17 アメリカ/監督:マーティン・マクドナー)
凶悪事件の捜査がすすまない警察を批判する三枚の立て看板がミズーリの片田舎に建った時、何が起こるか? 人間ドラマで推移するかと思いきや、ドミノのように次々と起こる事件。驚くべきはそれらのスペクタクルな描写が全体から浮いていない点。脚本も完璧に錬られていれば、演出も完全に抑制が効いている。かといって整いすぎたために枠に収まった印象もない。最後の車中の二人のやりとりに、アメリカは、世界はこれからどうすればいい?と曇ったはっきりしない空に吸い込まれていく問いが投げかけられるのを感じる。