映画
ウルフウォーカー ('20 アイルランド、ルクセンブルク/監督:トム・ムーア、ロス・スチュアート) 劇中の敵対関係の寓意面が自分にはあまりピンとこなかった。アニメとしてのビジュアルはかなり好みなんだが。オチもあまりに予定調和すぎる。簡単な決着はな…
新 感染半島 ファイナル・ステージ ('20 韓国/監督:ヨン・サンホ) ゾンビ・ポストアポカリプス。トレインサスペンスだった前作とガラッと変えてきたなあという驚嘆がまず。状況が膠着したあとゆえの、人心が爛れた嫌ーな感じがコロシアム描写を頂点に出て…
燃ゆる女の肖像 ('19 フランス/監督:セリーヌ・シアマ) 振り返った時、振り返らなかった時。どちらにも同じ余韻が篭っている。オルフェウスが冥界との狭間で見たのは、過去の未練か現在に根差す愛情か。答えは当人たちしか知り得ない。彼女の心が確かに燃…
82年生まれ、キム・ジヨン ('19/監督:キム・ドヨン) テレビドラマ調の味付けが多い。原作は主治医によるカウンセリングの聞き取り書の体裁を取ることで客観的に見えてくる、女性を見えない真綿で締め上げる社会の姿が鮮やかに浮かび上がったが、この映画版…
マルモイ ことばあつめ ('19 韓国/監督:オム・ユナ) やや人情もの寄りの演出になっているのが自分のストレート・ゾーンからズレていたが、母国語を自由に綴り出版する権利そのものよりも、行為としての辞書編纂に命を賭ける(観念上は同じことだがシナリオ…
透明人間 (’20 アメリカ・オーストラリア/監督:リー・ワネル) 犬は無事だが身内は大惨事です映画。トンデモSFアイデアでシナリオ構築してるものの、今の進歩スピードなら10年後実現してるやもしれぬ‐‐‐とギリギリ思わせて、どうにか没入感を損なわない。ス…
ルース・エドガー (’19 アメリカ/監督:ジュリアス・オナー) 黒人生徒と黒人教師の学内での対立を描く。もうこの時点で新しい。はっきりとした形のない敵意の応酬は、出口もなければ飽和点もない。ゴールのないランニングに喘ぐルースのラストショット。 ど…
囚われた国家 (’19 アメリカ/監督:ルパート・ワイアット) 陰謀ものSF。個人ひとりひとりが、つかみどころのない国家権力にどう立ち向かっていくかがテーマになっていて、その描きぶりや演出趣向の渋さがなかなか好みだった。ただ、華に欠ける部分は多々あ…
9人の翻訳家 囚われたベストセラー ('19 フランス・ベルギー/監督:レジス・ロワンサル) 世界的ベストセラー小説の各国語翻訳者たちが、事前漏洩を防ぐために閉鎖空間に集められたという実際のエピソードを元にした脚本。映像の迫力も、演出の捻りもテレビ…
テリー・ギリアムのドン・キホーテ ('18 イギリス・スペイン・ポルトガル/監督:テリー・ギリアム) 邦題は直訳の「ドン・キホーテを殺した男」で良かったんじゃないかな。映画制作がいかにエゴイスティックな本質に満ちた行いであるかへの皮相な視点が明確…
幸福路のチー ('17 台湾/監督:ソン・シンイン) 努力して渡米を果たした主人公女性の逡巡が、ひと昔前の台湾風俗や歴史的事件を背景につづられる。全体的なラインとしては高畑監督の「おもひでぽろぽろ」を思わせるが、内面に抱く希望が飛翔するイメージの…
私は光をにぎっている ('19/監督:中川龍太郎) 田舎から東京の下町に出てきた若い女性が、銭湯の手伝いをしながら居場所を手探りでつかもうとするシンプルな物語。猥雑で古びた昭和が色濃く残る路地の様子や埃っぽいがどこか落ち着く下宿の雰囲気がかなり自…
スマホアプリからの投稿テステス. パラサイト 半地下の家族 ('19 韓国/監督:ポン・ジュノ) カットの隙のなさ、シナリオの水漏れの無さが凄まじく、このレベルに達しているのは一昨年の「スリー・ビルボード」ぐらいかもしれない。更にエンタメとしてスリリン…
ドクター・スリープ ('19 アメリカ/監督:マイク・フラナガン) プロットだけを見るなら前作『シャイニング』のイメージから離れてるし、途中の山場である銃撃戦に至る心理ステップはやや不足と感じたが、メインキャラ二人の人物構築を表現する脚本とホテル…
楽園 ('19 監督:瀬々敬久) 現実に起こった複数の事件を元にしたと思われる小説を映画化。同監督の前作「菊とギロチン」と比べると展開が粗かった(日本の集落共同体では直接的な人狩りリンチの例はあまりないと思う)りして、なるほどインディペンデントと大…
ゴールデン・リバー ('18 アメリカ・フランス・ルーマニア・スペイン/監督:ジャック・オーディーアール) 今年は、(え、この映画どこに救いを見出せばいいのかな)と言いたくなるような展開、終幕を見せるものが多かったけど、この作品もかなり難易度が高い…
クリムト エゴン・シーレとウィーン黄金時代 ('18 イタリア/監督:ミシェル・マリー) クリムトとシーレの没後100年を記念して作られたドキュメンタリー。しかし構成がどうも甘く、芸術・文化面にも科学・政治面でも焦点がぼやける結果になってしまった感じ…
主戦場 ('19/監督:ミキ・デザキ) 少女像をめぐって、日本からやってきた発言者が総じて薄笑いで自分たちの間しか通じない独善的な歴史修正主義以前の女性蔑視コメントを口から垂れ流し、アメリカ人議長から「恥を知りなさい」と一喝される前後の映像を観れ…
この二日間、ブログ更新も忘れて新しく生まれた子猫4匹に見とれていた。 四月一日に迷い込んだ美しく若い猫が、ちょうど半年後の十月一日に珠のように愛らしく丈夫なこどもを産んだ。我が家にとって数十年ぶりの"純生"であり、そして最後の仔たちになるはず…
ホフマニアダ ホフマンの物語 ('18 ロシア/監督:スタニフラフ・ソコロフ) ストーリー構成に取りとめがなく、筋を追うのにやや苦労したが、すべては作家として名を成す前の青年ホフマンの心情風景だと思えば、むしろその思い切った企画の高尚さに感心する。…
ザ・バニシング -消失- (’88 オランダ・フランス/監督:ジョルジュ・シュルイツアー) 日本では劇場未公開だった作品がどういう経緯でかロードショー上映。80年代後半のドイツ郊外の風景の空気感やフィルムそれ自体の質感がレトロまで行かないほどの適度な…
ブラック・クランズマン ('18 アメリカ/監督:スパイク・リー) ヒロインがメガネをかけていたのが、なかなかアメリカ映画として斬新だと思ったぐらいで自分にはリー監督の演出傾向はあまり合ってないのかもしれない。主人公とタッグを組んで人種差別主義者…
グリーンブック ('18 アメリカ/監督:ピーター・ファレリー) 迫るクリスマスの雰囲気と男だけの侘しいドライブ旅行との落差が、そのまま社会における理念と現実を示している。依頼主のもっともセンシティブな部分をあえて言語化しないバランス感覚の鋭さ。…
メアリーの総て ('17 イギリス・ルクセンブルク・アメリカ/監督:ハイファ・アル=マンスール) 夫が、ノリと感じのいいクズ男という感じでもはやコメディすれすれ(メアリーの妹と同じ屋根の下で不貞行為にふけった後『ふー、やっと落ち着いたよ』と戻ってく…
十年 Ten Years Japan (’18 監督:(オムニバス)) 是枝裕和監督の総合監修により、若手5人が近未来の日本の姿を想像して短編をおくりだす。イメージの情感に大きく振れた地下シェルターで生まれた少女の物語『その空気は見えない』、逆に日常的なアングルで…
機動戦士ガンダムNT ('18 監督:吉沢俊一) 個人的トラウマと世界情勢が等価になった内面世界をガンダムで描いた、その度胸を自分は買う。ミシェルとゾルタンは同根の存在なのだ。祭りの後始末が必ず来ると分かっていても過去を取り戻したい欲求を抑えきれな…
1987、ある戦いの真実 ('17 韓国/監督:チャナン・ジュナン) 独裁政権の最中、一人の大学生が勾留中に拷問を受け死亡する。その史実をもとにいかに人々が真実を明らかにするため闘ったかを複数の視点より描く。拘置所の看守とその若い姪、かれらを中心にし…
きみの鳥はうたえる('18 監督/三宅 唱)函館で夜毎に遊ぶ三人の男女。水面下で揺れ動くかれらの数ヶ月間をとらえた青春映画。地方都市のぽっかりとした朝の、むなしさとやさしさをたたえたラストシーンは不可解さを残しながらも深い余韻が残った。汗臭そうな…
菊とギロチン('18/監督:瀬々敬久) 宣伝のなさから想像もできないほど、大作と名乗るに値するエピソードのボリュームと完成度の高さのある秀作だった。キャストが脇まで含めて抜群にいいし、その演技指導も有名俳優だからとか若手女優だからとかといった忖…
タクシー運転手 約束は海を越えて('17 韓国 /監督:チャン・フン) 光州事件での実話を元にした人間ドラマ。軍事政権の横暴描写は現実味がありすぎるほどに迫力があり、特に病院での一つの山場のシーンは痛切すぎてつらいほど。ドイツ人記者の外国人としての…