2018年3月に観た映画まとめ

花筐/HANAGATAMI('17/監督:大林宣彦)
三時間を超える上映時間はやや長かったが、監督の手法とテーマの集大成を感じるには妥当ではあった。
青春とはすなわち無為なり。君、かけがえのない無為を戦争などに捧げることなかれ。主人公の喉を借りて老境の監督が声を嗄らして叫ぶ。中年期に入ったキャストが青年を演じることの意味。白々しい茶番のような日々さえ、病床の少女には手のとどかない眩しさ。夜の海の水面に映る満月の道のごとく、夢と憧れはつねにパースペクティヴに道を照らす。君、有為の人生を選ぶなかれ。
シェイプ・オブ・ウォーター('17 アメリカ/監督:ギレルモ・デル・トロ)
どこかもったりと湿度がまとわりつくような画面づくり、ラストシーンでのある人物の“語り手”としての浮上。現実的な舞台設定と夢想的な演出手法とが緻密に絡み合う。おとぎ話を信じる者がいれば、真実は事実と等価となり、傷跡は聖痕にかわって新たな呼吸をはじめる。ところで、他者という現実から距離をとらずには生きられないという意味ではイライザも警備主任係も似た者同士であり、彼らの性行為は相手がいようがいるまいが自慰である。両者の違いは本質ではなく行動という結果にあり、デル・トロの作風の内向性と外向性との二律背反が極まったのが本作であるともいえよう。