映画

2022年7月に観た映画

リコリス・ピザ ('21 アメリカ/監督:ポール・トーマス・アンダーソン) 美形でもなく不細工でもない歳の差カップル。少年の方はふわふわしたステージ志向の片親育ち、女の方は教義を守ることに口うるさい信仰家庭で親姉妹と同居。このトッピングは苦いとい…

2022年6月に観た映画

オフィサー・アンド・スパイ ('19 フランス/監督:ロマン・ポランスキー) 全編に渡って演出と撮影に抑制が効いており没入感がすごい。歴史に名高い「ドレフュス事件」の内容についてはほとんど知識がなかったが、最低限の説明で理解ができるように作られて…

2022年5月に観た映画

犬王 ('21/監督:湯浅政明) 湯浅作品にありがちだった、ドラマの求心力の薄さが本作にはまったく無くてその時点でこれはただ事ではないのだと悟った。自分の運命の根本を探す主人公ふたりは、将来という名の行く先を求めようとしない。興奮の絶頂へ大衆に同…

2022年4月に観た映画

ナイトメア・アリー ('21 アメリカ/監督:ギレルモ・デル・トロ) どの街にもある『悪夢小路(ナイトメア・アリー)』。そこでは人生という迷路で袋小路に詰まった者たちが行き倒れている。悪意、失望、孤独、格差、搾取。あらゆる悲惨がカードのように目の前…

2022年3月に観た映画

ライダーズ・オブ・ジャスティス ('20 スウェーデン、デンマーク、フィンランド/監督:アナス・トマス・イェンセン) テック陰謀論、家族間虐待、社会的弱者、有害な男性性、ネオリベ接近ギャング。様々な現代の問題を詰め込んで、よくこの着陸点に辿り着い…

2022年2月に観た映画

ユンヒへ ('19 韓国/監督:イム・デヒョン) 日本映画「Loveletter」に触発されての企画ということで、雪の函館のなんてことない住宅地の景色がとても印象的である。ただ、ドラマの骨格がもうひとつ弱く全体としてボンヤリとした感触。それが、娘と男友人パ…

2022年1月に観た映画

「偶然と想像」(’21 /監督:濱口竜介) オムニバス3つとも、予測の付かないドラマと実在感のある演出とで一瞬も退屈させられる隙がない。想像の先にまた偶然が生まれ、想像を超えて偶然はめぐり来る。世界への皮肉な視点さえ自ら包括するかのような豊かで…

2021年12月に観た映画まとめ

ラストナイト・イン・ソーホー ('21 イギリス/監督:エドガー・ライト) ネオンの夜に閃く未知への期待とやがての悪夢。若さに待ち受けるのは常に罠なのか。時代を超えてつながるものは果たしてそこに在るのか? B級ホラーのチープさとストイックに絞られた…

2021年映画ベストテン

いつもながら個人的な興味マッチング6割、完成度への賞賛4割ぐらいで決めてます。 クローブヒッチ・キラー(’18 アメリカ/監督:ダンカン・スキルズ) 犯人の歪さとアメリカ家庭を抽象化した居室空間の静寂さとのギャップが冴える。 最後の決闘裁判 ('21 イ…

2021年11月に観た映画まとめ

蒼穹のファフナー THE BEYOND最終章 ('21 監督:能戸 隆) 今回は特に三話のなかでの内容振り分けが明確で、第10話で最終決戦の前の感情のやりとり、第11話で思い切りの戦闘描写(大スクリーンに見合った圧巻さで実際の尺以上に感じた)、第12話でエピローグと…

2021年10月に観た映画まとめ

Summer of 85 ('20 フランス/監督:フランソワ・オゾン) 未成年審判の行方と危ういひと夏の同性愛の結末とを追わせる並行エピソード構成で、思いのほか娯楽性が高かった。突然の事故死によりひとり遺された形の少年が亡き恋人との激しく儚い日々を小説仕立…

2021年9月に観た映画まとめ

ドライブ・マイ・カー('21/監督:濱口竜介) 選び取った関係を演じるという事、虚実を分けずに言葉を発する事、相手の《声》を体の中で反響させるために《耳》を傾けるという事。しかしどれだけ耳を澄ませてみても、結局は胸の中の《反響》しか聞き取れな…

2021年8月に観た映画まとめ

クローブヒッチ・キラー(’18 アメリカ/監督:ダンカン・スキルズ) もしも自分の父が未解決連続殺人の犯人だという証拠に気づいてしまったのなら…という悪夢そのものなシチュエーションを平熱な演出で日常のつづきのように描き出す。それによって、同じよ…

2021年7月に観た映画まとめ

グンダーマン 優しき裏切り者の歌 ('18 ドイツ/監督:アンドレアス・ドレーゼン) 全くの余談だが、友人から想い人を寝取る展開は「バック・ビート」を、愛する人に抱擁されて苦悩と向き合う覚悟を決める主人公の感情表現に「ミュンヘン」を、そして社会生活…

2021年5月に観た映画まとめ

どん底作家の人生に幸あれ!('19 イギリス、アメリカ/監督:アーマンド・イアヌッチ) 文豪ディケンズの自伝的要素の強い長編「デイヴィッド・コパーフィールド」を多人種構成のキャスティングで脚色。といって、インド系俳優が他の家庭成員が白人である主人…

2021年6月に観た映画まとめ

閃光のハサウェイ ('21 監督:村瀬修功) ロボットアニメでありながら、徹底して照明効果やカメラ構図を実写映画寄りにすることで、従来のガンダムシリーズのファンに新味を提供するとともに、そのシャープなビジュアルイメージによって新規の客もつかんだ。…

2021年4月に観た映画まとめ

私は確信する ('18 フランス、ベルギー/監督:アントワーヌ・ランボー) 妻殺害への冤罪が疑われる男を、その娘と親しいがために救おうとする調理師のシングル・マザー。やり手の弁護士を探して助手の役目まで負う彼女の行動力はときに常軌を逸しているので…

2021年3月に観た映画まとめ

シン・エヴァンゲリオン劇場版:ll ('21/監督:庵野秀明、摩砂雪、鶴巻和哉、前田真宏、中山勝一) ラストシーンが寂しくもあり爽やかでもあり感無量。色々と衝撃を振りまいてきた本シリーズがこうしてジュブナイルとして大団円を迎えた事に、様々な困難を越…

2021年2月に観た映画まとめ

ウルフウォーカー ('20 アイルランド、ルクセンブルク/監督:トム・ムーア、ロス・スチュアート) 劇中の敵対関係の寓意面が自分にはあまりピンとこなかった。アニメとしてのビジュアルはかなり好みなんだが。オチもあまりに予定調和すぎる。簡単な決着はな…

2021年1月に観た映画まとめ

新 感染半島 ファイナル・ステージ ('20 韓国/監督:ヨン・サンホ) ゾンビ・ポストアポカリプス。トレインサスペンスだった前作とガラッと変えてきたなあという驚嘆がまず。状況が膠着したあとゆえの、人心が爛れた嫌ーな感じがコロシアム描写を頂点に出て…

2020年12月に観た映画まとめ

燃ゆる女の肖像 ('19 フランス/監督:セリーヌ・シアマ) 振り返った時、振り返らなかった時。どちらにも同じ余韻が篭っている。オルフェウスが冥界との狭間で見たのは、過去の未練か現在に根差す愛情か。答えは当人たちしか知り得ない。彼女の心が確かに燃…

2020年11月に観た映画まとめ

82年生まれ、キム・ジヨン ('19/監督:キム・ドヨン) テレビドラマ調の味付けが多い。原作は主治医によるカウンセリングの聞き取り書の体裁を取ることで客観的に見えてくる、女性を見えない真綿で締め上げる社会の姿が鮮やかに浮かび上がったが、この映画版…

2020年9月に観た映画まとめ

マルモイ ことばあつめ ('19 韓国/監督:オム・ユナ) やや人情もの寄りの演出になっているのが自分のストレート・ゾーンからズレていたが、母国語を自由に綴り出版する権利そのものよりも、行為としての辞書編纂に命を賭ける(観念上は同じことだがシナリオ…

2020年8月に観た映画まとめ

透明人間 (’20 アメリカ・オーストラリア/監督:リー・ワネル) 犬は無事だが身内は大惨事です映画。トンデモSFアイデアでシナリオ構築してるものの、今の進歩スピードなら10年後実現してるやもしれぬ‐‐‐とギリギリ思わせて、どうにか没入感を損なわない。ス…

2020年7月に観た映画まとめ

ルース・エドガー (’19 アメリカ/監督:ジュリアス・オナー) 黒人生徒と黒人教師の学内での対立を描く。もうこの時点で新しい。はっきりとした形のない敵意の応酬は、出口もなければ飽和点もない。ゴールのないランニングに喘ぐルースのラストショット。 ど…

2020年6月に観た映画まとめ

囚われた国家 (’19 アメリカ/監督:ルパート・ワイアット) 陰謀ものSF。個人ひとりひとりが、つかみどころのない国家権力にどう立ち向かっていくかがテーマになっていて、その描きぶりや演出趣向の渋さがなかなか好みだった。ただ、華に欠ける部分は多々あ…

2020年5月に観た映画まとめ

9人の翻訳家 囚われたベストセラー ('19 フランス・ベルギー/監督:レジス・ロワンサル) 世界的ベストセラー小説の各国語翻訳者たちが、事前漏洩を防ぐために閉鎖空間に集められたという実際のエピソードを元にした脚本。映像の迫力も、演出の捻りもテレビ…

2020年4月に観た映画まとめ

テリー・ギリアムのドン・キホーテ ('18 イギリス・スペイン・ポルトガル/監督:テリー・ギリアム) 邦題は直訳の「ドン・キホーテを殺した男」で良かったんじゃないかな。映画制作がいかにエゴイスティックな本質に満ちた行いであるかへの皮相な視点が明確…

2020年3月に観た映画まとめ

幸福路のチー ('17 台湾/監督:ソン・シンイン) 努力して渡米を果たした主人公女性の逡巡が、ひと昔前の台湾風俗や歴史的事件を背景につづられる。全体的なラインとしては高畑監督の「おもひでぽろぽろ」を思わせるが、内面に抱く希望が飛翔するイメージの…

2020年2月に観た映画まとめ

私は光をにぎっている ('19/監督:中川龍太郎) 田舎から東京の下町に出てきた若い女性が、銭湯の手伝いをしながら居場所を手探りでつかもうとするシンプルな物語。猥雑で古びた昭和が色濃く残る路地の様子や埃っぽいがどこか落ち着く下宿の雰囲気がかなり自…