2018年1月に観た映画まとめ

(印象が強かった順)
女神の見えざる手」('16 フランス・アメリカ/監督:ジョン・マッデン)
ロビイストとはつまり広告代理店社員の言い換えでいいのだろうか? 閑話休題。とにかくジェシカ・チャスティン演じるプラグマティズムに満ちた主人公のキャラクターが鮮烈。社会の一歩の前進に多くの意味合いを込めたテーマ性と畳み込むようにスピーディーな展開に寄せた娯楽性との兼ね合いも抜群な快作だった。
エンドレス・ポエトリー」('16 フランス・チリ・日本/監督:アレハンドロ・ポドロフスキー)
詩人が共鳴者を得て精神の枷から自由になるまでの箇所がネオレアリズモのパスティーシュに見えたのでてっきりイタリアが舞台かと思っていたがどうも作者の故郷はチリらしい。寓話のようにエピソードが構成され、平面的なまでに色彩が画面に満ちている様子はまさに芸術家の頭の中を映像化したようで、だからこそかえってリアルな人生の印象が後味として残る。そして唯一シリアスで写実的に描かれるクライマックス・シーン。詩情に限界はないが、人間がふた親から生まれてくる現実にも揺るぎはない。
ノクターナル・アニマルズ」('16 アメリカ/監督:トム・フォード)
劇中劇のまるで昼間のテレビで流されるようなチープな筋立てとキャラクターにはやや退屈したが、すべてはヒロインの最後の表情のためだと理解した時、ようやく映画全体の見通し図ができあがる。非常に思い切ったつくり。なお、ストイックで構図が完成されつくしたショットは途中でいくつも出てきて、殺伐として散漫な劇中劇のシーンと好対照を為す。
否定と肯定」('16 イギリス・アメリカ/監督:ミック・ジャクソン)
ナチスホロコーストは計画的に行われたものではなかったという自説を批判されたがために、女性学者を裁判へと引きずりだすことを画策した男性学者。彼の言い分をくつがえすために、女性学者は弁護士チームと組んで絶滅収容所が実在したことを確実な資料を挙げて実証しなければならない。たとえば20年前なら、この映画は企画が実現しなかったのかもしれない。論理を認めず感情によって発言する人々が今ほど多くなかった時代なら。しかしフェイクニュースがマスコミにも珍しくなくなった現在、作中の裁判の行方には息を詰めてしまうものがあった。人権を後戻りさせないためには、なによりもそれを空気として後押しする“傍観者”の存在が鍵となる。この映画の弁護士や裁判官の姿をみて実感する。
(NETFLIXで視たもの)
ミッドナイト・イン・パリ

外向的で洗練された婚約者を持つ作家が、旅行先のパリで夜毎に20世紀初頭にタイムスリップする。演出はおそらく20世紀中葉のロマンチック映画にあえて倣っていると思われるが、ダイアローグに野暮ったさがあるのはもしかしたらウディ・アレン監督の持ち味かもしれず不勉強で判定不能。パリの酒場に集う著名人たちが次々に出てきたのは順当に面白かった。