サラエヴォの銃声('16 フランス、ボスニア・ヘルツェゴビナ/監督:ダニス・タノヴィッチ)

表面上はリッチでにぎやかなサラエヴォ中心部のホテル。しかしその内側では、給料未払いに業を煮やした現場従業員たちによりストライキが計画されていた。一方、屋上ではテレビ局によるサラエヴォ事件100周年を記念したインタビュー番組が撮影されていた。ホテル各層で複雑に交差する人々の思惑。「ホテル・ヨーロッパ」にゼロ・アワーが迫りつつあった。
流れるようなカット繋ぎで、ホテルという舞台の狭さを感じさせない。サスペンスの在り処は均等な配分で終盤になって形を為して、それとともに100年前のような取り返しのつかない瞬間を再び目撃することとなる。大局を見ることができずに事態を収拾するのを早々に手放したホテル支配人が歩くガランとしたロビー。その"宴の後"を俯瞰するラストシーンには繰り返す歴史を認識したような虚しさが強烈に焼き付いていた。