2018年4月に観た映画まとめ

ぼくの名前はズッキーニ('16 スイス/監督:クロード・バラス)
子ども向けのストップモーションアニメという体裁だが、冒頭から不慮の事故として非常に大きな悲劇が淡々と日常の一面であるかのように描かれている点や、保護施設の旅行として出かけたスキー場で大人からうける精神的な暴力、施設の子どもたちそれぞれの理不尽な過去の出来事など現実をストレートに反映させた脚本がより胸に迫ってくる。主人公の少年が惹かれるカミーユのユーモアとクールさを兼ね備えたキャラクターはこの作品の大きなスパイス。ただズッキーニ少年と大きく関わることになる刑事が家族と離れることになった経緯は、詳しく描くべきだったと思う。
ルイの9番目の人生('15 アメリカ/監督:アレクサンドル・アジャ)
タイトルの印象から、ほんわかとした家族の絆映画かと思いきや… ほぼサイコホラー。キーとなる人物の人となりを浮き立たせていく細かな描写(家族や知人友人との疎遠さ等)がじわじわと怖い。ラストシーンは意外性があって良い。色んな決断があるのはむしろ現実的。
ヴァレリアン 千の惑星の救世主('17 フランス/監督:リュック・ベッソン)
ワクワクするようなワイドスクリーン・バロックを映像化したという意味で期待以上の出来だった。世界観の色彩豊かさと比べると、ヒロインの野蛮スレスレな行動力と繊細な感受性とのバランスの描き方はやや旧態依然から抜けきってない印象はあった。あと、ラストシーンが監督の旧作「フィフス・エレメント」と一緒なのはあまり気が利いてないと思う。しかしそれにしたって美しい映画だ。あの異星の渚のシーンのエレガントさといったら。
空海 KU-KAI 美しき王妃の謎('17 中国・日本/監督:チェン・カイコー)
きっとこれまでの日中合作映画らしく大味な仕上がりでクライマックスは謎KARATE拳法でビュンビュン空を舞うんだろうなーと半ば覚悟をして行ったけど、絢爛な夢と質素な現実が交錯し入り混じる、チェン・カイコー監督らしい作品になっていて。自分はかなり好みです。夢も現実も、愛も欲望もすべては時間が一つにしてしまう。現在からはそれを覗き見ることしかできない。そんな諦念をはかなげでこまやかに描いた作品でした。楊貴妃がこんなに可憐に演出された事はこれまでに無いんじゃないかな。