リトル・ガールズ

リトル・ガールズ (ボウエン・コレクション)

リトル・ガールズ (ボウエン・コレクション)

会話主体の室内劇に似た一見地味なつくりの作品だけに、三品セレクトの内にこれを加える『ボウエン・コレクション』という企画の趣向の渋さが窺える。見所は20世紀初頭から半ばにかけてのイギリス中流風俗(重要な作中イベントである、海岸への集団ピクニックはイギリスからカナダへ来た移民一族の娘を主役にした「風の少女エミリー」でも描写されていた)に、小学生女子たちのしとやかさと活発さが混在したリアルな描きぶり、そして中盤にて序々に浮上してくるとあるミステリーとその長期の顛末。中心となる三老女のキャラクターがアクもクセもあるけど、憎めないあたりはなかなかエンタテインメントしてるなと。ボウエン小説おもしろいわー。大家の風格と気の置けなさが両立してる。今回は、作中に漂う空気と季節の印象とが偶然一致しているように感じて一層終盤の叙情が沁みた。電灯を付けたばかりの他にひと気のない家の中から、大きなガラス窓を通して暗く静かな秋の庭を眺めている、そんな寂しさの中に穏やかさが漂う読後感。