2008年総括アニメ・漫画・書籍

アニメ:引き続き、地味な良作に恵まれた年だったように思う。大量の原作モノに混じってどのクールにおいてもいくつかのオリジナル企画があったこと、原作付の中でも独自の解釈によりリビルド性が高い仕上がりも多々見られた点に視聴者として感謝したい気持ちです。以下、今年終了した内で全話視た番組一覧(一部略称)。
 「機動戦士ガンダム00(第一期)」「神霊狩 GHOSTHOUND」
 「しおんの王」「PERSONA trinity soul」「のらみみ
 「ギャグマンガ日和3」「カイバ」「コードギアスR2」
 「クリスタルブレイズ」「マクロスF」「キスダムR」
 「二十面相の娘」「鉄腕バーディーDECODE
 「ウルトラヴァイオレットCODE044」「黒塚 KUROZUKA
 「屍姫 赫」(注記:総集編的最終話のみ未放映のため1/2視聴予定)
計16本…こ、こんな少なかったっけ…… 1クールあたり4本ぐらいって事か… しかしこうやって抜き出してみると、ガチロボットものがほとんど絶滅状態に近いですね。さておき、そんな中でいつもながら個人的嗜好優先のベスト3を…選ぶ前に特に気に入った作品をコメント付きでノミネート(ほとんどWOWOWとフジばっか)。
神霊狩 GHOSTHOUND」:キャラクターデザインの丸っこい愛らしさと生々しい動機付けの脚本演出とのギャップが非常に魅力的。最終話がやや迎合的で惜しい。
しおんの王」:これも同様にアニメらしいデフォルメもあるキャラクターデザインとリアル寄りな性格描写という組み合わせにくわえて、二時間サスペンス的なあざといプロットとで独自色やドラマとしての引きが生まれていた。個人的には郷田&松風両氏による兄弟キャラ演技が美味しかった。ただし作画は残念なことも多かった(笑)
「PERSONA trinity soul」:なぜか今年前半は富山県旋風がアニメ界を席巻。この作品においては湿度が高く冷たい北陸地方の空気感がかなり印象的。ローカルさを前面に出した背景美術とガラス細工のような硬質なキャラクターデザインに、間接的な描写で繰り広げられるドラマ演出とで造り上げた繊細な作品。心理学用語をモチーフとした設定説明にわかりにくさがあったためラストの盛り上がりの足を引っ張った点にマイナスポイントもあるけれど。
カイバ」:現時点で最後のWOWOW製作アニメ。オリジナリティにおいては2008年度最強な湯浅監督TVシリーズ第二作。これもラストがいまひとつパンチが弱いのが残念。個人的にはいきなりのエロさ大爆発だった第二話、能登麻美子の斬新すぎる用い方の第六話、逆に能登かわいいよ能登炸裂な第十話が特に記憶に残っている。
キスダムR」:異例のリファイン作品。昨年中にさんざ悪評を目にしていた構えも、わりとすぐに消えた。いまどきは流行らないB級SFを描ききったスタッフの姿勢には心より尊敬を覚える。そして七生は永世中村悠一ベストキャラ。
二十面相の娘」:さわやか。非常にさわやか。地味なまでにさわやかな少女成長物語。勇を奮って言っちゃうけど、この作品のだけ平野綾の演技(というか発声)が好き。
黒塚 KUROZUKA」:作劇上のマニアックさであるいは今年一番。恋愛の恐い面を描いた大人の作品。ギャグ回がさほど浮いてないあたりもその証左。
屍姫 赫」:人間が抱く妄執をテーマとした異色の美少女バトルアクション。確変率は本年度トップだったと思う。貞方希久子の色気のある少女絵がえらく魅力的なのにも注目した。
 …なんか選ばなくていい気もしてきた(悪くない意味でドングリの背比べ)けど、とりあえず毎週の楽しみ度、最終話の満足度、思い入れで選んだら…
 第一位「キスダムR」ごめん本気です! DVD化されてないから画像出ない!!
 第二位「屍姫 赫」僕は會川昇を好きでいていいんだね!
 第三位「神霊狩 GHOSTHOUND」まこっちゃんかわいいよまこっちゃん
べっ別にマイナー好きや通気取ってるわけじゃないんだからねっっ。素です。
なおイヤーオブネタキャラは神霊狩の平田先生。最萌えも。

漫画:モーニングは記念年だった去年よりかはパワーダウンしたものの、勢いはおおむね続いている印象。もう一つの購読誌であるビッグコミックも新連載に意外に何がくるか分からない面白さ(マーティ・フリードマンの日本ポップスコラムたのしく読んでます)がある。始まったところだけど来年は流しのそば打ちが主人公の「そばもん」(山本おさむ)が面白くなりそう。あとは業田良家の「神様物語」が連載化してくれたらいいなあとか。ジャンプは復帰した島袋光年の「トリコ」のヒットに、そして「ONEPIECE」の衰えなさに尽きますね。女ヶ島編はもう大好きだ。マーガレット可愛すぎ。あとは軌道に乗りつつあるようにみえる「バクマン。」がどこまで伸びるかがこれからの最注目点。今年始まった新連載陣では「PSYREN」を一番面白く読みました(さすがに今は興味も落ち着いたけど)。では今年に連載終了した作品で印象が強かったものを以下に。

かむろば村へ 1 (ビッグコミックススペシャル)

かむろば村へ 1 (ビッグコミックススペシャル)

これには癒された。そして恐かった。ふつうの顔をして生きることの易しさと難しさが同時に描かれてる。あといがらしみきおって絵が上手い漫画家なんだなって初めて思ったり。デジタル処理原稿が似合う絵柄だし。
遅咲きじじい 3 (ビッグコミックススペシャル)

遅咲きじじい 3 (ビッグコミックススペシャル)

小林よしのりはゴー宣オンリー時代から脱却できたんだなあと。超高齢化社会の到来へのエールとしてかなり前向きなオチだったしギャグもよく笑えた。あと伊豆から戻った後の女二人の会話がすごく良かったなあ。
暁星記(8) <完> (モーニング KC)

暁星記(8) <完> (モーニング KC)

単行本描き下ろしになってから三巻目にして無事に完結。英雄譚として終わってるわけだけど、一番強いのはヒロインの方かも。彼女の動機はおそらく「強い男の種がほしい」だろうから。それも込みで、単純化した人類賛歌になってない点が好き。
自分の読んだ貧弱な範囲内ではこんな感じ。あとはモーニングで集中連載された、まだまだ江戸っぽい幕末を舞台にした探索劇「幕末*都市伝説なまずランプ」(たかぎ七彦)が時代考証へのこだわり込みで面白かったんだけど未単行本化。今年は同作者の新作が読めたら嬉しいけど。
一般書籍:ここ数年の傾向に続いて小説読書偏重中。それにしても翻訳ものの名作復刊が多く読めた贅沢な年でした。以下、印象が強かった順に。
拷問者の影(新装版 新しい太陽の書1) (ハヤカワ文庫SF)

拷問者の影(新装版 新しい太陽の書1) (ハヤカワ文庫SF)

凝らされた技巧よりも先に、主人公の引き裂かれたかのような時もある自我への作者の共感ある姿勢に打たれる。基本クールな中にここぞという時に情感をあふれさせるのが落としのテクニックですが、それができるのがあらゆるジャンルにおける天才の資質だなと。ところでシリーズ最終巻では主人公が自分の神格化を確認して終わるんだけど、そんなさりげないところ(あっさり終わるのよ、拍子抜けするほど弛緩した雰囲気で。)にもウルフのメタフィクションへの偏愛が。中世の絵巻物を紐解いているようでもあり、最新技術の映画をみているようでもあり…。動にして静な印象を与えるという事もまた傑作の一要素かと。
エヴァ・トラウト (ボウエン・コレクション)

エヴァ・トラウト (ボウエン・コレクション)

超能力や尋常でない意志を持つでもなく、ちょっとはみだしただけの女の人生をあぶりだすその姿勢。しかも何らイデオロギーも込めるでもなく。今年読んだ中でもっとも小説としてアグレッシヴなのがこの一冊かも。ラストに驚かされた意味においても。
メタボラ

メタボラ

一昨年に新聞連載されて去年に単行本化された作品だけど、派遣地獄を描いたこの作品を派遣切りニュースが溢れる今年末に読んだ偶然に意味を感じざるを得ない。人間は変われるけど変われない。不自由だけど自由。選べないけど選べる。まったく桐野夏生の底知れなさは一体なんなんだ。全身小説家という言葉がふと浮かぶよ。
他にも「ナツメグの味」(コリア)、「哀れなるものたち」(グレイ)、「蒸気駆動の少年」(スラデック)、「ナイフ投げ師」(ミルハウザー)、「薪の結婚」(キャロル)、「緑のヴェール」(フォード)、「20世紀の幽霊たち」(ヒル)、「幻影の書」(オースター)、「乱鴉の饗宴」(マーティン)などまさしく目白押しな年でした。ノンフィクション系では「死刑」(森達也)、「怖い絵2」(中野京子)、「ゲゲゲの女房」(武良布枝)、「縁側の思想」(ジェフリー・ムーサス)などなど。

わー今年もぎりぎり! 皆様よいお年をー