2024年冬に読んだ漫画

アンダーニンジャ

既刊12巻。基本コメディだが、そうでもしないとあまりに陰惨なニンジャの掟満載で読んでてやりきれなくなる。さらに舞台が現代日本ということで、しばしば『社畜』と自嘲する日本人の生きる共同体というのは、この漫画で次から次へと出てくる理不尽な封建制とあまり変わりがないのでは?とところどころでヒヤッとしてくる。特にくノ一が男全般を陥落相手とみなすようにマインドセットされる「汁忍」のエピソードが恐ろしかった。とはいえ、全体的に笑えるクオリティの高いギャグ漫画であり、そして同時にシビアなポリティカルアクションものでもある。読まずにおらいでか。


春駒日記~吉原花魁残酷日記~

既刊2巻。本が好きな主人公は父を亡くして、残されて窮乏した母や兄弟のために遊郭へ売られてしまう。手引きした男の「給仕して話し相手となるだけ」という甘言を疑うよしもなく、半ば強引に娼家で客を取らせられ最初は抵抗するがすぐに諦めざるを得なくなる成り行き非常にリアル。客の口では親し気に接しながらも欲の刷けくちの道具として見てくる目付き、それを受け止めざるをえない花魁たちの倦んだ顔などが表現豊か。ほとんど前近代の奴隷のような暮らしの中で生きる女性たちがそれでもギリギリの気を張って日々を送っている様子が迫真ながらも品を失わない作画で描かれている。残念ながら権利関係の停滞で休載中。いつか再開してほしい。


ダンジョン飯

全14巻。最後まで生物の不気味さと愛らしさ、心の単純さと複雑さ、生きることの罠の多さと愉しさとが両立されていて佳かった。


東京ヒゴロ

全3巻。漫画を俯瞰する編集者、凝視しつづける編集者、描きつづける作家、あえて筆を置く作家。久しぶりに東京モンがうらやましくなる作品を読んだ。静かに降る雪のような無音の音。


超鉄大帝テスラ

電子版全2巻。自分で稼ぐ前つまり自由に本を購買できなかった頃に、雑誌の広告で絵柄に魅せられてなんとはなしに気になっていた漫画家が自分には何人もおり、ここでサブカル評論界の魔人である大塚英志とがっぷり組んで一歩も退いてない大野安之はそのうちの一人。しかし面白い。ロボット漫画としてもスチームパンクSFとしても偽史満州ものとしても、昭和ロリコン漫画の残滓としても。幾層もの読み方が可能で、もう少し長く続きが読みたかったとも思う。