文部省作成の副教材本「心のノート」や、トイレ掃除推進運動、
疑似科学調言説「
水からの伝言」等を各章に分けて基本的にフラットな姿勢でルポしたものをまとめた一冊。最終章はまとめとして作者自身の主体意見を開陳している。それまで読み進めるのが少々だるかったきらいはあるものの、一見善意的で前向きな啓蒙精神にひそむ管理的
全体主義の問題点が見えてくる効果は感じられた。これは漫然とニュースを受け止めているだけでは、ちらっと違和感が脳裏をよぎる(小便器の水漉し部品がきれいになったからそれでビール飲んで打ち上げとかなー…)ものの、なかなかどこに将来的な展望としての不安があるのか見えてこないんだよね。善意が社会を息苦しくする、これこそがやはりアクチュアルな逆説なんですなあ。ところで「心のノート」取材部分での、
アメリカでほぼ同時期に起こった教育運動「キャ
ラクター・エデュケーション」との類似点を挙げている箇所は思わず国家
陰謀論が頭をよぎってしばしゾッとした。人格すら産業貢献のために形成される社会ってまさしく
ディストピアな未来像だよなあとも改めて。