選挙2('13/監督:想田和弘)

2011年の東日本大震災直後の日本を舞台としたドキュメンタリー映画。前作にあたる『選挙』は未見だが、主人公の「山さん」の基本的なプロフィールは把握した状態で観た。今回は無所属で川崎市議選に立候補した山さんが予算10万円で活動する様子を撮っているわけだが、いわゆるドブ板選挙とは正反対で、貼ったポスターこそ掲示板から剥がれてないか軽自動車で巡回して確認するものの、街宣車は走らせず、街頭演説も映画の中に限れば投票日直前の一回しか行っていない。…候補者作法から外れた場所に位置する山さんには、駅前の"一等地"での暗黙の場所取りもままならないように見え、日本という国の明文化されないルールの多い事情ぶりに、選挙というのはやはりその国の縮図でありカリカチュア(現実では何も思わずにきたが、自分の名前をでかでかと印刷したカラフルなたすきを掛けた候補者の姿は、シュールかつ滑稽さが漂う)なのだと上映中ずっと考えていた。選挙を行いながらアンチ・選挙の徒であるように見える山さんの姿に、映画のクライマックスにあたる演説シーンまではずっと"やる気"をうっすら疑っていた自分もまた、その構図の中に確かにいた。なお、作中もっともフィクション性の匂う、洗車マシーンの中での軽乗用車のサイドガラスに映りこんだ想田監督の顔。編集手法についての説明が端的にあらわれている強いインパクトのシーンだった。