ホーリー・モーターズ('12 仏・独/監督:レオス・カラックス)

映画史を辿るようなとある男の冒険…という一種のオムニバスなので、事前に情報をそれなりに得てから観た方がきっと楽しめただろうなと観賞中に考えたりした。これまでのカラックス作品にない、ユーモアというかもっと言えば自己諧謔の空気が全編に漂っていたのも少々戸惑った点。とはいえ、映像強度の高さはかなりのもので、夜のパリのねっとりとした薄汚れながらも濃厚な都会の空気が感じられる一連のシーンなどは、まるで高速バスの車窓に映る疑似フラッシュバックのように脳裏に焼きついた。観終えたあとの時間の経過とともに解釈が変わっていくタイプといえるかもしれない。