ジョバンニの島('14/監督:西久保瑞穂)

終戦直後の色丹島住民の苦難が題材となっているが、これは単純な戦争批判映画ではまったくなく、あえてジャンルにわけるとすればチャイルドフッド・ムービーだろう。後悔の苦さをも含めて、子供時代のきらめきを大人になってから顧みる視点で作られている。もっともそれが顕著なのが、進駐してきたソ連軍の将校や兵士をみる主人公の感覚としての、彼らの身体の大きさの表現で、居室で夫人とともにダンスを踊るシーン、ライフル銃を構えて教室に突如侵入してきたシーンなどでの相対的に鈍重な仕草などは、アニメならではの誇張で非常に印象に残る。また、進駐軍の父に連れられてやってきたソ連の少女の顔の造作や肌の質感の違いといったエキゾチシズムが、セリフによる慨嘆ではなくデザインとアニメートそのもので表現しており、そのさりげないこだわりひとつとっても、この作品の彫りの深さが分かる。
演出としてもっとも光るのは、主人公とその弟が自宅で機関車遊びをして影絵が銀河のように部屋の中に満ちるシーンで、圧倒的なファンタジーシーンでありながら、幼年期を生きる彼らの紛れもない現実としても描きだされており、これはクライマックスシーンへの布石となる。
突然に生きる場を理由もわからず奪われ、行き場所を明示されないまま短期間ながら抑留された住民たちの苦労を偲びつつ、子供時代における空想の力の重みをなにより輝かしいものとしたテーマにジャンルに捉われない普遍性を感じる。シナリオにところどころアンバランス(無鉄砲な判断を下す担任教諭や死地を何度も潜り抜けてくる叔父)を感じながらも、ずっと忘れずにいたくなる魅力がある。