排外主義をネット上の映像サイトで喧伝することによって、草の根活動を続けてきた通称『
在特会』の構成員のプロフィールを追いながら、彼らのデモ行進やその周辺行動、被告となった裁判の様子を取材したノンフィクション本。時系列を追って
在特会の成り立ちや規模・組織構造の変化を知ることができるので非常に内容を呑み込みやすかった。通常の
右翼団体との質の違い(昭和年代からの右翼主義者としては、彼らの
ファシストめいた振る舞いを「
愛国心」由来とするのは受け入れがたいらしい。この本を読んでいて自分もその違和感の本質を知ることができた)、
在特会を培養する素地となっている日本社会全体の変質(韓国びいきとされたフジテレビ本局の前でにこやかなカジュアルさで行われたデモの様子の日常続きからくる不気味さは、この本のハイライトといえる)をもカヴァーしているという過不足のない視点の展開は、目が覚めるような鮮やかさだった。本を閉じた後でも、
在特会の個々メンバーたちの様々な生活者としての"顔"が何度
もリフレインする。彼らには「はやく帰ってきたらいい」と伝えたくなる。著者の主目的もそこにあると思う。