2019年1月に読んだ本まとめ

退行の時代を生きる

退行の時代を生きる ―人びとはなぜレトロピアに魅せられるのか―

退行の時代を生きる ―人びとはなぜレトロピアに魅せられるのか―

 

 レトロピアとは、かつて在ったように語られる現在よりはマシな社会の姿を指した言葉だが、その一番の特徴は"実際には決して存在しなかった”というものだ。その二律背反ぶりにそれを希求する一部の人々の切なる願いが凝縮されている。著名なドイツの社会学者の最後の著作となったと後書きで知ることができるが、ただ惜しむらくは現状認識の段階に留まっているきらいが強いところだと思う。

 

革命とサブカル 

革命とサブカル

革命とサブカル

 

かつての大御所アニメーターであり現在はベテラン漫画家である安彦氏が、自身の全共闘世代という属性に真正面から取り組んだ姿勢を見せる対談集。かつての同志や旧友たちとの忌憚ない会話に、彼らのその時勢に激しく揺れ続けながらも仲間への心情や社会の行方への真摯さを保ってきた気持ちの熱さが垣間見えて、思わず背筋を正してしまう。また、アニメの流行の大系をテーマにした評論家の氷川竜介氏との対談では、氷川氏がこれまでになく断定的で切り込んだ観点でアニメファンの指向性を観察しており、いつものスタンスをこうまでイレギュラーにさせるのはやはり安彦良和という大天才への敬意なのだろうなと何やら妙に感じ入ってしまった。