ミュンヘン('05/アメリカ)

スピルバーグ作品って演出のあまりの分かりやすさ(本作だと初めてのミッションで-街中での暗殺なのに-終了後にわーわーと慌てふためいて車に戻る主人公たちとか、ハニートラップで仲間殺したオランダ女に報復いく時に自転車使ってたりとか)にほのかなプロパガンダ臭が感じられてなんとなく避けてきたんだけど、この映画はすごく面白かったし趣きが適度に渋くて好み。そしてなにより、ほんと分かりやすくて観ていてストレスがないよね。政治的陰謀部分についてはよく分からなかったりするけど、それも分からなくって当たり前という描かれ方が明らかで考えすぎずに済む。しかし案外救いのあるオチでよかった。国家間の面子合戦にはそれはないけど、少なくとも主人公には苦しみを大きくひっくるめて受け止めてくれる連れ合いがいる。それがすべてかもね… あ、説明してなかったけど、題材となっているのは1972年ドイツのミュンヘンはオリンピック村で起きたパレスチナ人のテロリストによるイスラエル選手虐殺事件。その首謀者たちをイスラエル首相に非公式に任命されたエージェントたちが片っ端から暗殺していくお話。島国住民の私からみるとため息をつくしかないやるせなさだった。主人公(エリック・バナすてきー)が対象にする相手が、ほぼ全員そろって小市民的穏やかさで描かれてるんですよ。観ていてきつかった。それはミュンヘン事件とは無関係なオランダ女への報復(ここの殺人シーンの臨場感が地味に凄まじい。軽くトラウマになっちゃった…)に頂点に達して、そこから主人公チームは瓦解の一途をたどる。主人公最後のミッションでは、もうどちらが悪役か完全に不明になっちゃってるんだよね。見事に失敗するし。