「山賊の娘ローニャ」第7話『霧の中の歌声』

この作品はファンタジー要素も多めに入っているのだが、それらに該当する種族についてはあまり説明を加えないスタイルで、視る側の想像に任せて解釈を自力で促す方向を取っているようだ。今回のエピソードのモチーフである『地下の者たち』についても同様で、顔を持たない黒い影として描かれるそれは、人類共通の持つイメージとして死の世界に属する存在であることだけは直感的に分かる描かれ方だった。
さて、そんな『地下の者たち』への注意を促されていたであろうローニャがなぜ彼らの楽しげに遊ぶ様子に惹かれて魅入られかけたかといえば、それは彼女が序々に世界の複雑さを知り、意識下でそれらを遠ざけて幼年時代の無邪気さに閉じこもりたいという欲求を知らず知らずに育てていたからだろう。初めて出会った同年代の異性であるビルクへの戸惑い、これまで考えずにいられた父の山賊という生業の中身、敵対するグループの接近と小競り合いといった無視できない案件が短期間にやってきたローニャには、森遊びは一歩まちがえると命取りの危険な逃避になる可能性があった。死の静寂な単調さは、時に有無を言わさない魅力となる。それは子供だろうと大人だろうと変わらず、鋭い感性を持つ前者にとってはあるいはさらに抗えない衝動となる。
児童文学では、生と死それぞれの観念が未分化に近い子供の感性を掬い取ったこういった“影との邂逅”が定番の描写となっているが、今回はそれを忠実に再現した、往年のハウス名作劇場を髣髴とさせる手触りに仕上げられていた。