蛇の卵

蛇の卵 (Seishinsha SF Series)

蛇の卵 (Seishinsha SF Series)

動物や機械もしゃべるようになった世界で、最高の知能を持った齢十二の少年少女たち。様々な種別に別れる彼らに、文明を破滅させる幼生『蛇の卵』という嫌疑を掛けた監視組織からの暗殺の手が迫るが、物語の行方は軽々と双方の思惑を超えて浮かび沈み、再浮上する。
ラファティの長編らしい飄々とした語り口、ギミックの多彩さに加えて、誰が生き残るか分からず裏切り者の存在もほのめかされるサスペンスにより、とらえどころを掴みにくい(その要素までもカバーした記述がエピローグ部にある)ながらも、案外に難解さもなく娯楽性すら漂わせた章構成になっている。それは、主役が子供たちというジュブナイルっぽさも理由の一つだろう。なお、私のお気に入りは少女預言者である蛇のヘンリエッタ。同性の嫌味合戦に応じないでもない適度の澄ましぶりが可愛い。