2021年4月に観た映画まとめ

私は確信する ('18 フランス、ベルギー/監督:アントワーヌ・ランボー)

妻殺害への冤罪が疑われる男を、その娘と親しいがために救おうとする調理師のシングル・マザー。やり手の弁護士を探して助手の役目まで負う彼女の行動力はときに常軌を逸しているのではと感じるように描かれ、じっさい劇中の展開で職を失うが、まだ幼い息子の信頼だけは繋ぎ留めることにより映画のバランスは保たれた。それは結末で、審議の真偽よりも裁判がいかに公平に行われるか、その手順を踏む意味をより重視するテーマに結実することでも確認される。

 

ノマドランド ('20 アメリカ/監督:クロエ・ジャオ)

ドキュメンタリー風味の映像詩という基本構造だが、観た経験から時間を経るごとにふしぎとドラマ部分が浮き上がってくる。矛盾との絶え間ない会話こそがアメリカという国だと、移民系の監督が静かに宣言するその残像としての事々。家を持たないだけで帰る場所がないわけじゃない。逆に言えば、誰にとっても最高な終の棲家なんて幻想にしか存在しない。だから荒野を走りつづける意味がある。そこから見えてくる乾いた大地は限りがなく風が常に抜けていく。

 

DAU.ナターシャ ('20 ドイツ、ウクライナ、イギリス、ロシア/監督:イリヤ・フルジャノフスキー、エカテリーナ・エルテリ)

何度説明を読み返しても、あまりの規模の大きさや正しい意図がよく理解できないが、ソ連時代の実在した軍事都市をまるごと再現するプロジェクトの一環で撮影された劇映画。ゾッとする尋問の模様のリアルさはまさしく“凡庸な悪”そのもの。それと呼応するラストシーンの主人公の激情は、巷間にありふれたもので、つくづく人の世を生きるのがしんどくなる。続編は期待してるけど、けど今からしんどいなあ。

 

Away ('19 ラトビア/監督:ギンツ・ジルバロディス)

主線のない色彩の面で構成されたアニメーションが美しく、ひとりぼっちでここではない何処かを目指さなくてはならない主人公にずっと付き添う鳥が単純に愛らしい。そして“盗んだバイクで走り出す”その先を想像したかのような謎めいた結末。海外アニメを観る喜びが短い上映時間の中に詰まっていた。なかでも吊り橋をめぐる攻防は、高所恐怖症を煽ってくるスペクタクルでハラハラ。鏡のような湖面に鳥の群れが乱舞するのが映るシーンは鮮烈。

 

(ネット配信で視た映画)

Mank/マンク ('20 アメリカ/監督:デヴィッド・フィンチャー)

全編モノクロなこともあるが、これは映画館で集中して観るべきと後から気付いた。時系列がこまかく前後するのも、気を付けてないと物事の関係が追えなくなる。あえてクラシカルなカメラワークや人物の対立構図で作られている中で、女性の主観のありかに気を払ってある現代性が際立つ。ボスの愛人を兼ねるブロンド女優は意見を口にすることに掛けては取り巻きの役員たちより率直だし、マンクの妻は口数少な目ながら同志のようでもある。