2023年7月に観た映画

君たちはどう生きるか ('23 監督:宮﨑 駿)
 後半の展開にとりとめがなさすぎるのは「ハウルの動く城」以後の宮﨑監督の悪癖だと思っているので、今回も自分は積極的に評価できないし、そもそも作品からのメッセージが観たあとに何も残らなかった。とはいえイメージの奔流としては満足できたので、プラネタリウムでのプログラム映画のような感覚という意味では料金の元は取れた。
 あと、主人公の少年の性のめざめとその危機からの辛くもの脱出劇という側面はけっこうおもしろい。主人公は精神的に父から若い継母を寝取るところだったんだけど、継母の内面での葛藤への共感(内奥の部屋で呻く継母の艶めかしさは本田雄抜擢の最大の成果)、父が自分自身をつねに奮い立たせねばいけないほど内面に不安を抱え込んだ存在であることの認知(インコ王のどたばた劇で父権制を戯画化)、亡母を個人として客観視することでマザーコンプレックスからあやうく脱却、そして我が身にひそむ大賢人(大叔父のパーソナリティを拝借)を見出して、現実世界に帰還する。妖精というか妖怪じみたお婆たちが水先案内人になっているイメージも良かった。が、やっぱりなかまをつくってげんじつにいきます!と優等生めいた少年がまっすぐな目で宣言するというつまんない決めシーン、そして戦争商売人である父への主体性への兆しをなんら劇中で表現してなかったんでやっぱ全体としてダメ。自分はまったく共感できない作品。