七王国の騎士

氷と炎の歌」の外伝として、本伝から100年さかのぼった時代を舞台とした連作中編が3本収録されている。"騎士道"の伝統性と欺瞞性とを並行して描写し、登場人物たちの心理を簡明に綴りながらもおのおのの背後に綾なす余韻をも浮き彫りにするマーティンの筆力は、淡々とした構成だけにいっそう圧倒される。こんな作家と同時代に生きることは、僥倖以外の何物でもない。…古臭い"騎士"の道を朴訥に追う主人公のダンクと、対になるかのように魔術師としての色相が濃い策謀家のブラッド・レイヴン(血班烏)の影が、回を追うごとに大きくなる構図は示唆的。