聞書 遊廓成駒屋 −不思議な場所のフォークロア

戦後の風俗営業法改正により、通称ソープランドへと業態を変えることを余儀なくされ、それによりじわじわと衰退していった遊郭。その一つの例を跡地でのフィールドワーク(残された茶碗や備品などを調査の緒端とする)や当時の関係者への聞き取りによって、往年の様子を浮かび上がらせる試み。営業を続けて利益を上げるために女性達をときにはあえて熱を出させてまで、検査を切り抜けさせていたという経営関係者の非人道ぶり、かつて実際に遊郭で働いたのちにそれぞれの道を歩んでいる女性たちの姿の生々しい描写には、作者の"やたらと安易に現在の倫理感覚をもちださない"というしばりとは裏腹に、貧困と社会福利未整備へと思考をめぐらされる。