星の光、いまは遠く(上・下)

氷と炎の歌」シリーズ作者の第一長編。ありふれた印象のある序盤から、中盤にさしかかるあたりで主人公とヒロインの状況や立ち位置が分かってきて俄然面白くなり、終盤に至ると昂奮から沈思に到る流れが印象深く余韻を残す。共著作ではあるが、惑星描写やシチュエーションの一部は「ハンターズ・ラン」に似ており、主人公の精神の変化は短編「放浪の騎士」と通底する。マーティンの小説家としてのメインテーマを知るには欠かせない傑作。それにしても肉体的にも精神的にも痛い描写のオンパレード。しかし全体としてはヒロイックとロマンティシズムへの距離を置きながらも賛歌になっているあたり、絶妙なバランス感覚が現されている。