ニンフォマニアック Vol.1/Vol.2 (’13 デンマーク/監督:ラース・フォン・トリアー)

二部仕立てで総体として四時間の大作だが、観ていて飽きることがないのは、象徴性の強いタイトルがそれぞれ付けられた8つの章に分けられていた事と、ユーモアがうっすら漂う余裕のある雰囲気が(特に女主人公が若い頃の気ままな性の冒険を綴ったvol.1において)ある種の優雅さでもってまとめあげているため。既存の観念からひたすらに自由であろうと謳っていた主人公が、セックスの快楽を突然に失ったのは、穏やかに愛していた父の死亡と、心から親しめたただ一人の恋人との再会の直後だった。その物語の結節点は皮肉と必然を伝えていて、ここにおいてテーマは人生全体へと敷衍される。以後の主人公の生涯は迷走しながらも展開は拡げられるが、彼女の苦悩は募りながらも最後まで冒険者としての歩みは止まらない。それは救いのないラストシーンでの足音において表現は明確を極め、そこに自分は監督の前作「ダンサー・イン・ザ・ダーク」との違いをみて一筋の光明に慰められた。生きることは呪縛であり可能性である。