UN-GO episode:0 因果論

ありふれたといってもさほど離れてない生い立ちと巷によくいる基本的に善良ながら受動的な性質を持つらしき青年のモノローグと少年時代の回想場面から始まる序盤から、“自分探し”の海外への放浪に出るあたりまでは心象風景系日本映画の風合いだが、突然ながら状況の必至でもあった中盤の急展開からはハリウッド大作ながらの砲撃とハンドルさばきが。そして時間軸が現在に戻るとカルト宗教に潜むオカルトとそこで起こった殺人ミステリーの要素も含まれる…というおよそ一時間に満たない映画とは思えない詰め込み具合だが、それらがきちんとまとめあげられている豪腕がなかなかに凄い。最大のクライマックス・シーン、新十郎(となる前の新十郎)が因果によって自らに問わせて、答える二つの言葉。目の前に在る物と、心の中心に居る人。それだけを手に、事実よりも真実を探る「敗戦探偵」結城新十郎は瓦礫の街を今日もゆく。かっこいいよね。新十郎自身はあまりかっこいくないのを含めてかっこいい(かっこいいのはどちらかといえば憂国の士であったらしき蒔郎の方なのだが、よく似た顔立ちを持つ相似形ながら新十郎の方が残るという寓意は苦いのかもしれない)。放映中のアニメ番組の番外編をしかも六本木の真ん中で観るというイベント性も込みで、非常に印象深い興行を楽しませてもらった。