「認められたい」の正体 -承認不安の時代

「認められたい」の正体 ― 承認不安の時代 (講談社現代新書)

「認められたい」の正体 ― 承認不安の時代 (講談社現代新書)

承認不安とは、つまり対人恐怖であり同時に社会不信である(と言ってよいと私見する)が、問題の根が深いのは現代日本人の“他人に自分の存在を認められるか常に心細く思う”その対象に、本来は手放しで受け止めてくれるはずの家族までもが入っているケースがざらにある事とこの新書では鋭く突きこむ。そうまでも、これまでに共有されてきた価値観の拡散多様化は進んでいるわけである。では、もし周囲の偏った“常識”と一般的に想定される良識とが衝突した場合はどう振る舞えば建設的な方向に向かえるのだろうか。その時は、後者に従うべしと著者はオーソドックスに提言する。その解への道程の付けようが、明快でかつ紙幅の許す限り具体的だった点に読んでいて信頼感を持った。なお、「親和的承認」「集団的承認」「一般的承認」と他者から受ける承認を段階的に三つに区別しているのが本書の最大の特徴だが、自分自身の社会スタンスや心理バランスを客観視する時に役立ちそうに感じる。欲をいえば、個人の問題にとどまらず社会全体へと敷衍していくであろう承認不安の蔓延についてさらに論を拡げてほしかったが、それは新書刊に求めるべきではないとも分かっている。