シビュラの目

シビュラの目―ディック作品集 (ハヤカワ文庫SF)

シビュラの目―ディック作品集 (ハヤカワ文庫SF)

こういう物言いはかえって自らの浅学を示しがちではあるが、ディックのオカルト開眼期に著された表題作はモチーフやシチュエーションがデュレンマット『巫女の死』に似ていると思った。それよりも、こちらはなんというか悪くいえば支離滅裂、良くいえば直観をさらにつよく触発される強いリーディングがあるが。他の収録作は、至ってSFジャンルをきちんと踏襲しており、ときにはミステリ要素があったり恋愛テーマが色濃く表に出ていたりして、それでも最も中心にあるのはよりよき世界へのまっすぐな指向であって、今回もやはり(ディック… 変な作風やけどスッキやわあ)という読後感に満たされたのであった。