「LUPIN the Third〜峰 不二子という女〜」第10話『死んだ街』

前回は現世で迷える峰不二子、今回は境界で戸惑うルパン三世。ルパンは不二子を物好きで構っているわけではなく、とある強引な依頼から複雑な事情に参入する事になったらしいと描かれるが、しかしそれもどこまでが現実に起こったことで、どこからが幻覚の中での出来事なのかあえてボカして構成されている。『物語』というタームを何度も強調してくるのは以前の回からだったが、個人が自らを概観して抱くストーリーへの呪縛に他人は関与しづらいという"孤独"の象徴を意味しており、または「ルパン三世」シリーズのスピンオフの位置にある作品と強調するための方便でもあるのだろう。ルパンが知った不二子の出自が真実だったかどうかは分からないが、世界を混乱に陥れる麻薬の存在は事実であり、不二子という女の実像を捉えないことには、ルパンが囚われた時間の止まった街から真に脱出することもまた、叶わないと彼自身は考えているのが実際の状況。シリーズの要となる回だったが、巧くフォーカスをズラし続けたなという印象で、何よりグリム童話を映像化したようなルパンと不二子の対話シーンがキッチュさ極まっており鮮烈に記憶に残った。さて、今回で不二子とルパンは運命共同体に近い構図にお互いが配されていると示され、それとともにダブル主人公に近い体制が敷かれ終えた。あとは不二子の内面の問題だけを解決すれば、きれいに最終回がまとまりそう。