ダゲレオタイプの女('16 フランス・ベルギー・日本/監督:黒沢清)

おそらく主人公は移民二世ぐらいの設定なのだが、そういった社会背景をあまり描かかなかったことが吉とでたか凶とでたかは非常に微妙。ただ、比較的に善良な人間がグラデーションを描いて倫理にもとり、その結果として犯罪の当事者になってしまう。そこに不自然さはなかったので、やはり正解だったのかもしれない。監督の国内作とくらべてスーパーナチュラル・ホラーとしての怖さがあまり出ていないのは、ヨーロッパ人の風貌のためか、地理が生む湿度の違いのせいか。とにかく、恋愛とは絶対的に一方通行の錯覚ではないかという疑念がこだまするラストシーンが怖ろしくて切なかった。