幼年期の終わり

幼年期の終わり (光文社古典新訳文庫)

幼年期の終わり (光文社古典新訳文庫)

友好的な異星人の来訪により、科学技術と社会構造の劇的な進歩を得た地球人類だったが、しかしそれはゆるやかな退潮の時代でもあった。そして一つの始まりのスイッチが入る日がやってくる…という感じのプロット。新訳だけあって古びた印象はほとんどなく「なるほど、これが色んなSFジャンルの元ネタとなっている古典か」という興をむだに削がれることなく楽しめた。三部構成中の、冷戦構造をモチーフとした第一部は作者が改稿したそうで、今回は初めてその新しい版が日本で翻訳出版されたとの事。それにしても平易で読みやすい文体だ。そこからは屈折することのまだなかった理想主義が垣間見えて、一つの時代の空気が感じ取れる気がしてくる。