薔薇とハナムグリ

20世紀イタリアを代表するシュルレアリスム作家であり、欧州議会のメンバーを務めた経歴も持つ国民的作家モラヴィアの傑作選。表題作は性的指向少数者を暗示するかのような、華麗な花より地味なキャベツを偏愛しながらそれを隠す昆虫の擬人化の物語。最後の一説のしれっとした感じが可笑しい。独裁国家の悪夢を詩的に表現したようなファンタジー小品『夢に生きる島』、ホラーながらテンポのよさでコミカルに読める『清麗閣』など、文章の緻密さのために突飛さよりも典雅ぶりが目立つ。