秘書綺譚

秘書綺譚―ブラックウッド幻想怪奇傑作集 (光文社古典新訳文庫)

秘書綺譚―ブラックウッド幻想怪奇傑作集 (光文社古典新訳文庫)

文学史内の位置付け的意味合いも入った作者解説や年譜も付いており、怪奇小説から神秘小説への作風変遷の掴みやすい構成と合わせてブラックウッド入門書としてうってつけの短編集。過去と現在、未来の主人公の心理の対比が鮮やかに浮かび人間存在の根源的な不気味さまで到達する「約束」の古典的幽霊小説の中に秘められた前衛性の芽や、吸血鬼モチーフをSF的発想で拡張することでヴィクトリア朝末期のオカルト流行を俯瞰したような「転移」、ブルジョア社会にしのびこむ中世暗黒期のほの暗さが余韻を漂わす「炎の舌」などが印象が特に強い。