本へのとびら -岩波少年文庫を語る

本へのとびら――岩波少年文庫を語る (岩波新書)

本へのとびら――岩波少年文庫を語る (岩波新書)

前半と後半では用いられている紙質が異なり、著者がスタジオ・ジブリ内で配った小冊子用に短文を書いた「岩波少年文庫の五〇冊」編では古びたような黄色味の強いものが選ばれているという装丁サイドの凝りよう。セレクト内容は、題名こそ知っているものの中身を読んだことはない児童小説の傑作が多く、大人でも(大人こそ?)読みたくなるラインナップ。後半は、児童小説を特に好きになった理由や、本にまつわる世情の変遷についてのインタビューから起こされた内容で、3.11以後の時代を思いのほか強く意識した言葉(『まだ以前の生活を、いつまで続けられるかって必死でやっている最中でしょう。』など、自分自身のニヒリズムと戦っている様子も窺えて興味深い)が終盤につれ増えていて、丁寧な口調ながらその伝える意志の明確さには、読んでいて柔らかくも胸を衝かれた。