加害者家族

加害者家族 (幻冬舎新書 す 4-2)

加害者家族 (幻冬舎新書 す 4-2)

つかみとなっているくだりが強烈だ。ある日突然、夫が連行される。拘留が何日も続くが警察からは何の情報ももたらされない。妻は知りたい一身で地域で起こった犯罪を自力で調べるがその中にひとつ夫にアリバイがないと思いあたるものを見つける。そしてパトカーに乗せられて一時帰宅した夫の口から、自分の配偶者にして息子の父であるその口から、殺人を犯していた事を涙ながらに告白される。想像しただけで胸の奥に重い塊を感じる一幕である。いくら一緒に暮らす家族であろうと、一挙一動を知れるわけがない。それでも一旦事件が起こりそれが報道されれば、容疑者の家族はまるで共犯者であるかのような視線にさらされることになる。その具体例についていくつも示唆してくれる新書である。有名な事件についての記述が多いが、ネットと関連が深い通称「こげんた事件」では、自分も猫を飼う人間のはしくれとして犯人に強い憎悪を抱いた覚えがあるだけに、その父が職場を追われたという現実を知り読んでいて非常に複雑な気持ちになった。アメリカやヨーロッパとの現状比較の章もあり、コンパクトに情報密度の高いオススメ本。なお、各章内での記述区分が少々こまかすぎるように思ったが、これはテレビディレクターが本業である著者の、相手を飽きさせないためのカット割り編集技術からくる習い性のように思えて興味深くも感じた。