戦う司書と終章の獣

ラストエピソードに突入ということで、末部の引きがこれまでになく強い。中盤の『終章の獣』大暴れまではやや展開が冗長に感じたが、マットアラストやハミュッツの行動原理を説明するとともに世界の秘密を開陳した箇所からは、鋭い人間洞察の眼が感じられる作者の本領発揮といった感じ。その中でちらりと述べられる前館長代行であるフォトナの行方は、人物から距離を置く独自の文体と相まって歴史家の相対的な視点を感じさせるようで印象深い。なおアニメ版ではやや説明不足気味に感じた、バントーラ図書館下位組織としての神溺教団誕生のあらましは、この巻を読むことで理解が深まったように思う。