戦う司書と世界の力

シリーズ最終巻。総力戦の決着までの刻一刻と移り変わる状勢を丹念かつケレン味あふれる筆致で描きだしており、講談調に時になる語り口は小気味よさがある。能力合戦と並行して衝突するのは、かつては恋人同士だった敵味方双方が抱く正義のありかで、ジュブナイルの伝統を継ぐライトノベル・レーベルである本作では当然に「現在の世界を滅ぼさず続行させる」側が最終的に勝利するのだが、その点の扱いは繊細で児童文学に似た手触りがある。不満があるとすれば、エピローグが多少あっさりしすぎる点か。ここらあたりを含めて、デビュー作である第1巻「戦う司書と恋する爆弾」とくらべると寓意性への昇華が足りないきらいがあるのは、もしかしたら時間的な制約があったのかもしれないとふと想像した。ともあれまだまだ若い作者なので、着眼点のオリジナリティをこれからも武器としてゆっくりと伸びていってほしいと期待する。