リトル・シスター

リトル・シスター

リトル・シスター

旧題「かわいい女」の村上春樹による新訳。読み終えた今、旧題の方を支持したい気持ちに駆られている。登場する三人の女とも、それぞれにそれなりに(ここ大事)可愛らしく、全員がそれだけで済まない。
…ハリウッドに棲息する得体の知れない映画関係者や、セレブに紛れて正体のつかめないギャングなどキャラクターの多彩さがマーロウ・シリーズの他作品より際立っているように感じるけど、読みどころはそれだけ、とも言えなくもない。なにより訳者自身が“自分もこのセリフの辻褄が合わないと思うし、犯罪の因果関係もすぐには説明できない”とさらりとあとがきで述べている小説にお目にかかれたという点の方が印象に残っていたりもする。それでも、読後にチャーミングな印象が確かに残るのはさすがのチャンドラー節。