戦う司書と荒縄の姫君

アニメ版のあとでこの原作エピソードを読むと、ノロティという純粋なようでいてひねくれている性格の少女キャラをアニメシリーズでは描き損ねたままだったのだなと思えた。“エンリケから見たノロティの姿”に徹したその趣向は、割り振られた尺の短さからすれば間違ってはいなかったかもしれないが、原作であぶり出されたノロティの全貌がアニメでも描けていれば、もっと早くに彼女というキャラクターを理解し積極的に好きになれていたなという感慨を持ったのも事実。それほどこの原作エピソードでのノロティの生育歴、マットアラストやヴォルケンとの会話、敵役カチュアが具現していた実は世界に普遍する悪の形は、寓話としての示唆に満ちている。ノロティは愚かにして聖なる者、傲慢にして謙虚さが過ぎた人格。突然に吹き出す彼女の怒りはそのアンバランスさのさりげない表れとして作中の印象的なアクセントとなっている。