ドラマ「ゲゲゲの女房」完結

身を入れて視始めたのは結婚展開からだけど、売らんかな気を引かんかなという目配せのない落ち着いたシリーズだったのは重畳。これまでもオンリーワンの世界構築と価値観とで伝説的存在だった水木しげるを、夫婦の二人三脚として新しい視点を啓かせた自伝エッセイ『ゲゲゲの女房』を原作に目を付けた意義とそれを最大限に活かした演出の成功の意味は大きい。キャスティング、演技も挑戦性を持ちながらもそれに応えた好演が見事だった。終盤には、夫婦それぞれの父の死を描いた構成が非常に印象的。特に、もうひとりの水木しげる、あるいは水木しげるになりそこなった水木しげるとでも言うべき、茂の父の戯作への夢に包まれての眠るような衰弱の過程を描いたその製作の野心ぶりには、けっこう驚かされた。