戦う司書と恋する爆弾

若い読者向けのファンタジー小説ライトノベルと呼ばれるようになってから(ではソノラマ文庫コバルト文庫を買っていた自分の十代の頃はどう言っていたかとんと思い出せないのだが)、おそらく初めて読むシリーズである。文庫なのに折込ピンナップが口絵代わりに付いているのには驚いた。
文章量は少なすぎず多すぎずだが、情景を描き出すに支障が出ないようにしてあるにつけ、ラノベに求められる技術が窺い知れる。そんな読書に慣れていない年齢層への配慮の陰に、さりげなく手管が忍ばされている箇所がいくつかある。たとえば、心を奪い去られたはずの少年が“本”の中の過去の時代に死んでいる少女にいつのまにか真っ直ぐに感情移入している、その変化をたった一文で簡潔に、そう、あえて外部説明抜きで描写する思い切りの良さ。そんな隠し味の用い方に、作者の文学への深い愛情と信頼を見た。

追記:アニメシリーズとの比較が大きな動機で原作に手をつけたわけだが、読み手への負担を避けてかアニメよりも登場人物を最小限に絞ることで、断章的構成になっている観がある。まさかこの章でヴォルケンがまったく顔も名も見せていないなんて思いもしなかった。あと挿絵の数は予想ではもっと多いものと思っていたので、たとえばルイモンが絵として起こされていないのは意外だった。アニメオリジナルのキャラクターデザインも相当あるということか。あと、主人公ハミュッツの幅がある性格は原作の方が早くから明示していて、彼女が館長代行として外向きには極めて誠実かつ有能なこと、とある思考パターンには強い嫌悪を示すことなどがすでに描かれており、ここはアニメシリーズとの明確な違いになっている。