戦う司書#19「阿呆と虚空と踊る人形」

二枚目正義漢を阿呆といいきるアニメも他にないわ、ほんと。ヴォルケン、死に際(Aパートで終わるとは…)に近づくにつれて透明度が増していったのがかえってリアルに感じた。ヴォルケンは血迷ったんじゃなくて本来の自分により近づいていっただけだと、演出上で告げられていた。自分にはもう何もないとセリフ上では言っていたけど、最期に思い浮かべたのはミレポックの顔。体が重くなったのではなく軽くなったのは現世でやり残した事がないから。滑稽ではあってもいい死に様がある。それをアニメでやるのもこれまた珍しい。
一方、他者を使い捨てる悪党でありながらも魂に誇りを持つオリビアの願いは、これもまた推理の必然でしたね。実効的な意味はない願い。阿呆は世界を動かさないけど世界を繋ぐことはある。冴えない中年魔導師シャーロットが前回の印象とはうってかわった活躍を見せたのもモブキャラが後々に前面に歩み出るという本作の一貫した趣向ならでは。
ラストにオリビアがいたのは、あれはあるいは彼岸?(シャーロットの能力は何て呼ばれてたっけ。「時空転移」か「次元転移」のどっちかで正解が分かれそう) たとえそうでないとしても、命を賭して空に願いを描く『阿呆』な彼女が往きつくのは“お花畑”でしかないだろう。皮肉と共感があのシーンにおいてもやはり並立していることが分かる。