青い文学シリーズ「走れメロス」

前後編仕立て。ヨーロッパの古い小話を翻案した演劇のシナリオ執筆を依頼された作家が、その内容とかつての親友から受けた裏切りとを重ね合わせて煩悶する…という内容。主人公を太宰自身とはしないことで、テーマの普遍性を高めるとともに劇作の入れ子状態をつくり、真正面の絆物語が陳腐に堕さない工夫が為されている。作家が脳内シミュレーションする舞台の上の登場人物たちの身振りが、非常に役者演技の特徴を伴っていて見ごたえがあった。前後編ともに作画が華美であったけど、特に前編がキャラクター原案の許斐剛の特徴を最適化した作画ぶりで、ジャンプ読者としてはなんだか感動すらしてしまった。