ゴースト・ストーリー傑作選

ゴースト・ストーリー傑作選――英米女性作家8短篇

ゴースト・ストーリー傑作選――英米女性作家8短篇

19世紀後半から20世紀にかけて、英米では主にクリスマスシーズンにあわせて幽霊物語が流行ったという(ディケンズクリスマス・キャロル」が産み出した伝統?)。掲載されたそれら短編の主な作家たちは女性だった。本書はその中から選りすぐりのイギリス作家4編とアメリカ作家4編を収録。古典的な幽霊屋敷ものから、社会の不条理を暗に込めたモダンホラー調のものまで、バラエティに富んでいる。前者に属するものでは似たテイストながら、読後感がやや違うエリザベス・ギャスケル「老いた子守り女の話」とイーディス・ウォートン「呼び鈴」が比較できて面白い。後者では魔女狩りを意味するようでもあり、死神譚としても読めるようでもあるメアリ・ウィルキンズ・フリーマン「ルエラ・ミラー」が巧みな構成。「ルエラ・ミラー」はほんとに怖い。この気味の悪さとねばっこい後味は、何年経ってもちょっと忘れられそうにない。誰しもがルエラの立場になるかもしれないし、彼女のような存在を責め立てる方にまわってしまうかもしれないというその座りの悪さが。