UN-GO 會川昇脚本集

UN-GO會川昇脚本集 (ANIMESTYLE ARCHIVE)

UN-GO會川昇脚本集 (ANIMESTYLE ARCHIVE)

アニメはすでに全話視聴済みだが、読んでいる内にまさしくミステリー小説の際に似て謎解きにふと引き込まれている自分を感じた。それはたとえば、セリフの中身が複雑だった『ハクチユウム』(このサブタイトルは「白痴遊夢」とも読めることに書籍化された今回気付いた)『楽園の王』の前後編だったり、キャラクター同士の思考ロジックのやり取りが活発だった『幻の像』だったり。逆に、映像後の演出の按配がこんなに効いていたかと思わされたのは最終三部作。しかし概していえるのは、會川昇のシナリオはおそらく例外的に小説的であり、それと同時にそこを意識してか映像演出への配慮をあらかじめ込めた注意書きも多いという点。その相反するかのような方向性は、なるほど演出責任者である監督との相性の如何が完成品に強く出るだろうなと思わされるものだった。本作「UN-GO」の場合はポップにより広い一般層へのアピールを目指して、トントンとすすむテンポのよさを第一に大事にしており、それは資料編での企画案などからも分かる。その工程をも想像できるという、作品コンセプト自体に多層構造を特徴にもつ「UN-GO」にそぐわしい書籍企画に、読者として参加できたのは幸いだったと思う。ただ物足りなかった点が一つだけ。脚本決定稿の他に準備稿や第一稿が載せられているのは『因果論』、『舞踏会の殺人』、『海勝麟六の犯罪』、『海勝麟六の葬送』のみだが、その他の回の前稿の存在についても編集コメントが欲しかった。